第14話 平成の東方見聞録

 怪しい光に吸い込まれて目が覚めると、どこかわからないところにいた。


 ポケットに手を入れると、所持金がどこか別の国のものに変わっているし、それ以外は、携帯も銃も、何もかも消えていた。


 ここは商店街のような場所で、大きなフグ、太鼓を叩くピエロ、遠くには高い塔が建っていた。


「お兄ちゃん。なんか困ってそうやけど、大丈夫かいな」


「お前は誰だ! 動くな!」


 しまった。銃はないんだった。


「うわ! あんたいきなり何すんねん!」


 そう言うと、老人女性はお腹を押さえながら地面に倒れた。


 撃たれた? 銃はないのに? 


 もう一発撃ってみよう。


「うわ! あんた容赦ないな〜」


 撃たれたそぶりを見せるわりにピンピンしてる。撃たれたフリをして遊んでいるのか?


「ごめんなさい。気付いたらここにいて……」


「ほんまかいな! いつからや? お腹とか空いてへんか? とりあえず飴ちゃん舐めとき」


「ありがとうございます。今さっき目覚めたところで……」


「そうか〜。やったら一旦交番行った方がええかもな〜。おばちゃん今から大事な用事あって案内してあげられへんけど、ここの人みんな親切やさかい、誰か連れて行ってくれるわ」


 そういうと、老婆はどこかに歩いていった。


 私は交番に行くついでに、撃たれたフリについて色々試してみた。


 銃は拳銃でなくてもよく、アサルトライフル、バズーカでもいいらしい。撃たれた設定なら、あまりにも頑丈な体だが。


 途中で、ソースがかかった謎の球体を食べた。それはまるでマグマを食べているようだった。

 頑丈なのは本当なのかもしれない。


 途中で飴を七個もらいながらも、交番にたどり着くことができた。


 交番に入ろうとすると、またもや目の前が光で覆われた。


 どうやら私は何かに巻き込まれているらしい。


 そうだ。色々なところに飛ばされるのならば、それぞれの国についてをまとめた本を書こう。


 初めの国は、皆が飴玉を携帯しており、銃で発砲するフリをすると、撃たれたような素振りを見せる、と。

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