鍛錬:—一眼砂漠—

始まりの町、噴水の横で水色のブロックによってプレイヤーが構築されていく。


「っと。これでログインOKだな」


「SIN——ムグッ」


鎧が俺の名前を叫びそうになったため口を強制的に塞ぎ、駆け足で街から出ていく。


不自然そうに見る視線を若干感じるが、気にしている場合ではない。


予定とは違う西側の門から駆け出て、岩陰で鎧を怒る。


「あのさ、先生に前言われたじゃん?人間の言葉を話せる欲望という相棒デザイアの情報は拡散されてなくて重要性が高いって。聞いてなかった?」


「ハイ!」


「返事が大きくてよろしい!学べ!」


最後に頭をブッ叩いて鎧を叱る。


「じゃ、これから基本宿屋か戦闘中の情報共有以外で話さないように」


「ふぁーい…」


痛覚なんてないはずなのに頭のてっぺんをさする鎧を置いて、俺は戻るのもめんどうなため、西の狩場である一眼砂漠イチガンデザートを歩いていくのであった。




<><><><><><>




一眼砂漠イチガンデザート


その名の通り、砂漠に出るモンスターはほぼすべてが単眼。


単眼であるために死角が作りやすいかと思えば、範囲攻撃を多用してくるためそこまでの不利を相手が背負っているわけではない…というのが、先生の言だが、信用ならないので一応全部試していくこととする。

ちなみに《デザート》は砂漠。という意味だが、スイーツの方のデザートと賭けているのか、砂漠に色合いの誓いホットケーキ型のレアモンスターもいるが、そこはご愛敬といったところだろう。




<><><><><><>




「見えッにくい!」


ここのモンスターはほぼすべて砂色に近い体表を持つため、モンスターを探すのが困難という問題がある。

先生は言わなかったが、先生には問題にならないのか…意地悪く言わなかっただけか…どちらかによってはあとから個人的に嫌がらせをするとしよう。

ついでに煽ってきた場合も。


と入ったものの、さてどうしたものか…


いや。逆に考えるんだ。無防備にいれば向こうから襲ってくるんじゃね?


ということで俺はLvUPでゲットしたスキルポイントをツリーに入れようとウィンドウを開く。


スキルツリーは一人3本。レベル1上がるごとに5Pゲット。

俺は【即死耐性】【攻防一体】【属性攻撃】の三つ。


【即死耐性】に関しては即死なんて今はそうそういないから後回し。

【攻防一体】は純粋な継戦能力強化。

【属性攻撃】…かなぁ。大体初撃か二撃目で終わらせられるだろうし、属性で強化するのが優先…ってとこだな。


現時点で持っている90Pを全部入れておおよそ2割。スキルツリーは進化とかもあるらしい以上、先はだいぶ長い。


90Pで得た属性は水、火、風の基本的な三属性。


「【水攻撃】」


そう唱えるだけで手に持っている買ったばかりのショートソードには水のエフェクトが憑く。というか…


「どんどん流れて言ってるな…?もしや?」


素晴らしい。これならこれを振り回すだけでも索敵ができるだろうな。さすがにモンスターに水が貫通することはないだろう。


「ハハハ!姿を見せろ!隠れても何も意味はないぞ!」


水がはねた場所を目の端でとらえ、その瞬間にそこにいたモンスター。砂漠蛙デザートフロッグを一刀両断で切り捨てる。


鎧は別で見つけたのを踏み潰す。


その後数十分蛙やら兎やらカレイやら…カレイってのは魚だからな?砂漠に何故魚がいるのかは知らない。まぁそれらを駆逐していると、唐突に通知が来る。


〘統一モンスターが現れました!統一モンスター用フィールドに転移します!〙


とういつもんすたー?なにそれ?


というキミ!そんな君に説明しよう!


<>

SIN Z先生の、ゲーム解説!


「えーっと。まず統一モンスターってのは全世界のすべてのサーバーで最初に倒したものが称号を得られる…と考えられているもので、その理由がゲーム内にあるヘルプで、統一モンスターの欄があり、そこで称号の話がされてるからだ」


「そしてもう一つ。この称号を取ったものには特別なスキルツリーを追加される…と予想されている」

「その理由は、ゲーム内の歴史文献から統一モンスターを倒したものが不可思議な力を持つようになった。という記述が見つかったからだ」


「以上の理由から統一モンスターは、全プレイヤーから命を狙われる存在になった。というわけだ」


<>


そんな意味不明な情景がなぜ頭の中に浮かんだのかは不明だが、そのおかげで落ち着く。


鎧が置いていかれていたのが見えたため、俺はまず回帰と降臨を手早く行い、戦闘態勢に入る。


「鎧!」


「ハイ⁉なんでしょう⁉というかココ何処ですか⁉」


混乱中の鎧の脛(脛が弱点というわけではないらしい)を蹴り飛ばして落ち着かせる。


「痛った!何するんですか!」


…ことはできなかったようだ。


「落ち着け。これは…統一モンスターに遭遇してしまったってだけだ。何ら焦ることではない」


「統一モンスター⁉もっと焦ってくださいよ!ヤバイじゃないですか!」


「五月蠅い…来るぞッ!」


地面が震え、巨大な振動音が響き聞こえてくる。


砂の地面から現れたのは…


「グロロロロロロォォォォォォォォォォーーーーーーン!」


巨大なクジラであった。

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