DESIRE・INFINITY FUTURE
@ba-su
新しい朝が来た?
諸君、正義とは何だと思う?
まぁ人によってそれは様々だと思うが、此処では2048年を生きる一人の特撮ヒーローや漫画のヒーローを最善の正義と信じる男に目を向けよう。
その男は、そのヒーローに関係する仕事に就きたいがために漫画雑誌の出版社に就職を願ったが、選考で落ち、人に疑問を投げかけるような。言ってしまえば苦手なタイプの漫画を出す出版社に勤めていた。
「ハァー…」
それがこの喫煙所で電子タバコを吸っている男、神坐 勇雅である。
視点:神坐 勇雅
「勇雅ー!黒音さん来てるぞー!」
「はーい。りょーかいしたー」
その呼びかけに適当に返事をしながら電子タバコからタバコを抜いて近くにある灰皿に突っ込んで喫煙所から出ていく。
「ハァー…かったりぃなぁ…」
ウィンドウを叩きながらそうぼやくと、一人の同僚が話しかけてくる。
「そういうなって。これでも昔と比べて超絶楽になったんだからよォー」
そういう彼は現在50手前で編集者としてかなり高齢ながら、現代技術の進歩にしっかりと着いてきている存在として社内で一目置かれる。そんな存在である。
ついでに言うとするなら、老害ってわけでもないしな。
というより、説明を忘れていたな。此処はVR世界に構築された部屋で、家からログインできる。5年ほど前にVRが一気に普及して、現代の職業スタイルは基本こんな感じだ。
話を戻そう。俺はウィンドウの操作を終わらせ、黒音先生の待つ一室へ向かう。
「…んで?黒音先生?今回はどんな感じのをお持ちで?」
まぁ、と言ってもその黒音って名前のペンネームで、本名不詳。会社側は知ってるだろうが、俺とかみたいな木っ端は知らない感じだ。
「ああ。ついに君の要望も受けてな。ヒーロー系の漫画を描くことに決めたんだがな…」
「マジィ⁉どんな感じで⁉こっちはいつでも準備万端ンー…ってわけじゃないけど、少なくとも今は結構ボルテージ上がってる感じっすよ!」
「ステイステイ。君の興奮すると三下みたいな口調になる癖は直したほうがいいと思うぞ?勇雅クン?」
「あぁッ…すいませんね。ちょっと興奮しすぎたようで…」
黒音先生に怒られはしたが、そこまで抑えるような雰囲気は感じないので俺は全力で興味持ってますよー感を醸し出すように感情を顔に意識して出す。
「まぁいい。だが一つ問題があってね?君にはそれを解決してもらいたい」
「いいでしょう。承諾します…なので早く書いてくださいね?担当が変わる前に!」
「それに関しては問題ない。もとより君以外にはこの作品はこの社じゃ担当できないと思うからね」
黒音先生はソファの背もたれに体重を任せて天井を見ながら話し出す。
「条件だが…勇雅クン。このゲームは知っているね?」
そう言って黒音先生はウィンドウに【DESIRE・ONLINE】のパッケージを映して見せてくる。
「ええまぁ…一応知ってはいますけど…それが何か?」
「知ってるならいい。条件はこのゲームでヒーローロールプレイをすることってところだ」
「ヒーローロールプレイィ⁉そりゃまぁゲームで仕事できるっていうのならいいですが…それはまたなんでですか?」
黒音先生はにやりと笑って紙をどこからともなく取り出す。
「これが今できているネームだ」
だがそれは何も書かれていないまま。完全な白紙である。
「白紙じゃないですか!こっからどうするんですか!」
「だからそこが重要なんだ…私は、今までヒーロー系を書いてこなかったものだからね…少しいきなり書くってのはつらいものがあるんだよ」
「そこで、君に理想の実例を見せてもらいたいと考えてね。できるかい?」
「上等ですよ…ブランクは有りますが、ゲームは得意な方ですからね」
心が滾る。久しぶりに起動するゲーム。VRが一般普及してすぐの時に適当なののβを一度やったきりだが結構動けたのを覚えている。PVPがβ500人中8位とかだったかな?まぁそんなもんだったってだけだけど。
「じゃ。よろしく頼む…というか、私も一応実例を間近で見るために入る予定だからね。予定が開いてる日は?」
「今日の午後からでもOKですね」
「Good!なら午後一時からだ!私のPNは【黒音】にする予定だからすぐ見つかると思う」
「俺は一応全ゲーム統一で【SIN Z】にしてるんでよろしくお願いします…と、そうだ。ゲーム購入代金って経費で落ちますかね?」
俺が恐る恐る聞くと黒音先生が部屋を出るためウィンドウをいじりながら答えてくれる。
「落ちないんじゃないかな?」
「…いくらですか?」
「4万8000円だね」
「高ッ⁉」
「言質は取ったよー」
その言葉を最後に黒音先生は部屋から消えた。
今は十時…経理のヤツに聞きに行くかぁ…
俺は肩を落としながら経費申請ができるかを経理部署室をウィンドウで選択して聞きに出向くのだった。
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