#3 お昼時のお姫様は少々おてんばで


 ファレナと一緒に水路に出てみると、人々の声が一段と大きく聞こえてきた。

 周囲を見ると、水路の右側には中世風の石材建築の宿が立ち並んでいるのが見える。

 残念ながら水路の上はどのようなものがあるのか分からなかったが、同じような建築様式というよりは現代風なお洒落なカフェのように見えた。


 水路の少し先には大橋が架かっており、様々な装いをした人々が行きかっている。


「ファレナ、ここはどうやらかなり発展している街らしいね。」


「そうですね、私が知っているなじみある街の風景と似ています。それに大きな城壁ですね。」


 ファレナが城壁と言ったように、水路終点には大きく威厳を醸し出す城壁が聳え立っていた。その威圧感のある城壁に俺の心は圧倒されるものがあった。


 未知の都市を観察しつつ水路を進んでいき、水路の階段を上ることでようやく大橋にたどり着いた。


 ここまでくると人々の賑わいはさらにヒートアップしていて、大橋の左側は屋台通りとなっていた。多くの屋台があり、そのどれもが興味をそそらせてくる。

 現在時刻を確認しようとエルスを取り出すと、時刻は午後12時30分を表示していた。


「ゼディア様、そんなに屋台をじっくり見物しても私たちは一文無しなのですから、一つの商品も買えないですよ?」


 ファレナにはバレているようだ。

 実はここにきて屋台のいい匂いにつられて、お腹がすいてしまった。


「だがしかし、ファレナ。ここの屋台には美味しい匂いが漂いすぎているよ。たとえ一文無しだとしてもお腹がすいてしまうのは仕方ないと思うけどな。」


「ええ、分かります。私だって、このような良い匂いが漂っていたらお腹がすいてしまいますから。ただ、昼食を食べるにはお金を作らなければなりませんね。」


 彼女はそう言って、お腹に手を当ててお腹がすいてるようなそぶりをした。


「う~ん、この世界の通貨は確かリアだったよね。ファレナ、何かいい稼ぐ方法とかって知ってないかな?」


 屋台通りの先の噴水を目指しながら俺とファレナは歩いていく。


「私のいた世界であれば、リアの稼ぎ方は冒険者になってクエストというものを達成することでリアを稼ぐのが一番効率が良いと言われていました。しかし、冒険者というのは危険が付き物です。他にもリアを稼ぐ方法はありますが、今日中にリアを稼ぐにはやはり冒険者以外ないでしょうね。」


「やっぱりこういう異世界転移って、冒険者稼業が一番効率いいんだな。よし、ファレナ。決めたよ。俺と一緒に冒険者をやろう!」


 隣を歩くファレナに向かって自信を込めてそう言った。


 するとファレナは俺の決断を知っていたかのようにふふっとかわいらしい笑顔を見せた。


「ゼディア様が決めた選択です。でしたら、私も選択しなければなりませんよね!」


 ファレナは急に上機嫌で俺の右手を取って、人だかりを避けながら噴水まで一緒に駆け出した。

 それはまるで、魔王城から解放されたお姫様みたいにはしゃいでいるのだった。


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