ソウル・オブ・ジ・オリジン編 23話「創造された魂に眠る因果」
この世界の生けるモノ全てに、因果が関わる。
君たちの因果は、物語のレールから外れることができるだけの力を持つ。
この物語の終点には、君たちの終わりを迎える因果律の番人が待つ。
因果律に囚われたモノには、ある制約を設け、君たちの前に立ちふさがる番人となる。
因果はなくならない、そして君たちに関連するモノが選ばれる。
そうだ、この物語では君たちには、死以外の逃れる術はない。
だが、目の前には、君たちの死よりも更に被害が及ぶ厄災が訪れている。
止める手立ては、君たちの手にかかっている。
この物語で何を感じ、何を考えるかが君たちに与えられた使命だ。
さぁ、終わりの物語の始まりだ。
クァトロさんに先導されて、ある場所に着いた。
「やっぱり来たか!クァトロ!」
「遅かったじゃないですか!クァトロさん!」
「マルテ!パルチザン!状況はどうじゃ!?」
「自体は一刻を争う状況だ。」
「中の封印が突然解かれたと同時に、天道の玉髄が召喚されたという感じです!」
「やはりか・・・!お主ら!ひと仕事を頼もう!封印の間の中の魔法陣の上で夢幻装魂を使うのじゃ!」
「クァトロさん!?何故その力のことを!?」
「理由は後で話すのじゃ!後は頼むぞ!」
僕らは急いで中へと入って、部屋の中央にある魔法陣の上に立つ。余計なことは考えるな!今は目の前の状況を打破することが最優先だ!
「みんな、いくよ!」「はい!」「おう!」「うん!」
「「「「夢幻装魂!」」」」
「アイオンソード!」
「アイオンロッド!」
「アイオンガントレット!」
「アイオンボウ!」
夢幻装魂を唱えて魔剣が目の前に現れた瞬間、僕らはその場から動けなくなって辺りの景色がどんどん変わっていくように見える。何だ・・・?僕たち以外の全ての時が、巻き戻っていないか・・・?僕らが立っている封印の間も神殿のような作りに変わっていって、景色の変化が突然止まると、何処からか時計塔のゴーンゴーンという音が響き渡った。
~真理と摂理を秘封する千変の迷宮~
「ここは・・・レウートサクスなのか・・・?ねぇ、みんな?」
後ろを振り向くと、三人の姿が忽然と消えていた。
「なっ・・・!?」
みんなが居ないことに僕は動揺していると、突然頭の中に文字のようなものが浮かび上がった。
「この街の・・・違和感を探せ?」
何が何だか分からないけど、僕には選択肢は残されていないことは明白だった。だけど、みんなはどこに行ったんだ・・・?これもこの街の違和感を見つけると何かが変わるのだろうか・・・?
「みんな・・・無事でいてくれよ。」
僕はゆっくりと封印の間から出て辺りを見渡すと、街には人は居るが、声をかけても反応が無く、まるで僕の存在を認識していないようだった。だけど、人混みの中に僕の方を見ている少女が居る。その少女は僕を手招きするような仕草をして、街の奥へと走っていった。
「ま、待ってくれ!君は何か知っているのか!?ねえ!」
少女の後ろ姿は、いくら全力で走っても一定の距離を保ったままだった。少女を追いかけ続けて息も切らす頃、いつしか大きな樹木がそびえ立つ区域に足を踏み入れていた。
「ここは・・・どこ・・・?」
頭の中で何かが引っかがっていた。ここは、僕の知らない場所じゃない。ただ何故か思い出せない・・・僕は何かを忘れている・・・?僕は頭を抱えて必死に何かを思い出そうともがいていると、僕の背後から一人の少年と少女が手をつなぎながら僕を通り過ぎていって、消えていった。
「君は何故覚えてないんだろうな?」
声のする方に振り向くと、無機質な笑顔を作っているマルタが立っていた。
「マルタ・・・!?マルタ!!」
マルタに歩み寄って肩を掴もうとすると、僕の手はマルタに触れることのなく通り過ぎていった。
「ここは記憶の回廊。そして彼女の思い出の場所でもある。」
「君は・・・マルタなのか・・・?」
「そうとも言えるし、違うとも言えるよ。君が忘れていることは、彼女が心の奥底にしまい続けている思い出なのさ。君がこの事を覚えてないと知ったときは、心底悲しんだ。だけど、彼女は諦めなかった。例え偽りの記憶の中の愛だとしても、そのことを疑いもせずに、純粋に、まっすぐに君を選び続ける。なんて愚かで、なんて美しいのだろうか!だが君はその感情を捨ててから、彼女のことを何も見てはいなかった!それでも、君を愛する彼女を愛し。君が彼女の想いを断ち切っても、そのすべてを受け入れることはできるか?」
忘れていること・・・もし僕が失った感情が、マルタと深く関わりのあることなら、僕は諦めない・・・!諦めたくない!
「例え偽りの感情であっても、僕にとってマルタは特別な存在であり、大切な仲間だ!だから・・・もしマルタが伝えきれない感情に押しつぶされていても・・・僕の失った記憶が戻らなくても・・・。僕は彼女を愛し続ける!」
僕のその言葉に、目の前の彼女は少し安堵したような表情になった。
「だったら、その繋がりだけは大切にするんだよ。例え君たちがこの先の未来で死を向かえたとしても、その繋がりだけで君たちは幸せな未来へと進めるだろうから。さぁ、彼女はあそこで待っているさ。」
その言葉を言い残し、目の前の彼女は蜃気楼のように消えていった。消えていった彼女の指し示していた場所へ向かうと、植物のツタに絡まって、その中で寝ているマルタを見つけた。そんなマルタの周りのツタをゆっくりと引きちぎって、ゆっくりと抱きかかえる。
「マルタ?息は・・・ある。ただ寝ているだけか・・・?マルタ!マルタ!」
マルタを優しく揺さぶると、ゆっくりと目を開けて僕を見つめる。
「リヴァン・・・さん・・・?よかった・・・夢だけで・・・終わらなかったのですね・・・!」
マルタの安否を確認できて、少しホッとした。だけど何故かマルタの身体はどんどん透明になっていって、消えていく・・・。
「マルタ・・・!?なんで・・・身体が!?」
「リヴァンさん・・・私はこの空間の終点で待っています・・・。大丈夫です。死ぬわけではありませんよ。」
「マルタ!?マルタァァァァ!!」
まだ僕の気持ちを直接言えてなかったのに、マルタは光の粒子になって消えていってしまった・・・。もしかして、レインやリセルも同じように何処かに囚われているのか・・・?やっぱり、この街の違和感を探すしか無いようだ。
「この空間の終点、か・・・。」
この空間で成すべきことはわからないけど、僕らの記憶に関することが起きることは分かったようだった。きっとマルタも無事なはずだ。そう言い聞かせながらこの区域から離れようとした瞬間、目の前に明らかに異質な壁画が現れている!?その壁画には黒い涙を流す人間が、自身の胸に剣を刺し、その人間を優しく見守る天使が描かれていた。
「この壁画の天使、僕達が夢の中で出会った守護天使に少し似ているような気がする・・・。ん?なんか壁画の下に文章が書いてあるぞ?なになに?選択を求めるオリジンは、自身がどんなに傷つこうとも、仮初の感情を求めることができない。その謎はこの真理と摂理を秘封する千変の迷宮にある。」
「それは、心が無いとは言えない、何かが欠如している存在。」
な、なんだ!?頭に直接響くような声が聞こえてきた!?でも、なんか聞いたことのあるような声だった・・・。一瞬視線を別のところに移した瞬間に、目の前にあった壁画が無くなっていて、それと同時に鐘の音がゴーンゴーンと鳴り響いた。
「どうやら、時間は限られているようだ・・・。」
僕は早足で街の中へと戻った。
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