第17話「悠久を漂う黄昏の廃都」
~~悠久を漂う黄昏の廃都第一階層~~
目の前の光り輝く閃光が徐々に目に馴染むように徐々に優しい光へと変わっていった。瞬きを数回繰り返すと、目の前にはずっと昔に栄えていたような立派な建物が並ぶ廃都に僕は居る……。辺りを確認すると、皆が右目に紋章眼を宿しながらぼーっとこの空間の空を見上げていた。
「お、おい!皆、どうしたんだ!?」
三人に声をかけても返事はない……。でも、もしかしたら紋章眼を使えば同じ光景が見れるのではないか……?と思った僕は、紋章眼を使って空を見上げた……すると目線の先の空には、青い炎を纏った巨大な隕石が映し出されていた。アレは……いったい何なんだ……?どうして紋章眼を使うと見れるんだ……?と、僕らはその光景に目線を外せなくなると、後ろからルルさんに肩をポンポンと叩かれた。
「皆様、あの隕石は見えますでしょうか?」
「あ、あぁ……見えてるよ……?」
「アレは天道流星の玉髄の一つです。こちらの因果と別の世界の因果が重なり合い、あの隕石がこの空間に現れました。時間はあまり残されていないようですが、今のあなた達ならきっと、この試練も乗り越えられます」
ルルさんはその言葉を言い残して、霧のように消えていった……。彼女がこの場から居なくなると、皆の緊張の糸がほつれたように意識を取り戻したようだった。
「あれ……ここは一体どこなのですか……?」
「俺……空の隕石を見たら、何も考えられなくなって……」
「アタシは恐怖で一歩も動けなくなったわ……アタシらはあんなものも止めないとならないの……?」
「まだ分からない……けど、この先に答えが待っている気がするんだ」
「はぁ~……仕方ないわね……不本意だけど、あんたに従うわ……」
「ありがとう、リセル」
僕らは意を決し、廃都の中を探索していった……。この廃都を探っていく内に、一つだけ違和感を感じた。街の中には僕ら以外の人間は居ないはずなのに、街の至る所に人の気配を感じる……。でも、近づいたり建物の扉を開けて中を探っても何も出てこない……それもとても不自然に、誰かが何かを隠しているように何も見つからない……。
「お、おい!何か変なものを見つけたぜ!」
レインの声の元へ向かうと、レインは神殿のような建物の中を見て焦りの表情をしている。
「レイン!どうしたんだ!?」
「な、中を見てみろ!」
建物の中を見ると、天井や壁が不自然に真っ暗で、床にはまるで小さなジオラマのような別の廃都の映像が描写されていた。
「なんですか……これは……!?」
「まるで僕らが今まで居た廃都とそっくりな光景だね……」
「まるでって……まるっきりこの廃都を上から見た光景じゃないの!?」
「だけどよ……あの辺を見てみろ」
レインが指を指した方向を見ると、このエリアにはなかったモノが存在している。何と言うか……この廃都に入る前の湖のようなモノが映されていた。
「アレって……まさか!」
僕達がその存在を認識した瞬間。僕らは空の上から廃都へと投げ落とされていた。
「「「「うわぁぁぁぁ!!!」」」」
や、やばい!このままだと、地面にぶつかる!思考が定まらない、もう地面が目の前に近づいている!もう……ダメだ……!と思った瞬間。地面すれすれで僕らは急停止して降り立った。
~~悠久を漂う黄昏の廃都第二階層~~
「うわっと!?た、叩きつけられなくてよかったぁ……!」
「こ、怖かったです……もうダメなのかと思いました……」
「さっきと、同じ……街という感じではないの……?」
「おいお前ら!呑気に構えている時間は無いぜ!」
拳を構えるレインの視線の先を見ると、四体の影のようなモノが武器を構えて近づいてきている。
「リセル!頼む!」
「任せて、解析!四体ともファントムナイトよ!倒せない相手じゃないわ!」
解析と同時に、僕とレインは走り出す!突進するレインの後ろに隠れるように、僕もファントムナイトへと突進する!
「ジオインパクト!」
技を繰り出すレインの背後から、僕も一撃を与える!
「シャドウブレイク!」
レインの渾身の一撃で地面を叩き割ってよろめくファントムナイト達に、僕の斬撃でファントムナイト達の武器を破壊すると同時に、僕とレインはバックステップで少し下がる。これで無力化した!二人とも、頼んだよ!
「吼えよ疾風!怒涛なる深緑の嵐よ、仇なすモノを貫く槍と化し、塵に変えよ!」
「燃え盛る真紅なる炎嵐よ、その刃を焼き尽くす極大の力をもって、焦土に変えよ!」
「「ブレイジングゲイルランス!」」
炎嵐を纏った風の大槍が凄まじい速度で僕らの間を通り抜け、四体のファントムナイトを貫いて、大きな火炎の竜巻が生まれてファントムナイト達は跡形もなく消えていった。いつも通りエグい威力をしているな……。
「二人とも!お見事!」
「いえ、レインさんとリヴァンさんが敵を無力化して隙を作ってもらえなきゃ当たりづらい連携術なので、助かりました!」
「ありがとよ、マルタ!しっかしリセルのゲイルランスだけでもエグい威力してるのに、炎属性まで付与すると恐ろしい威力になるのは、いつ見ても爽快だぜ!」
「まぁ例え中級魔法とはいえ、アタシの魔力制御に即対応するマルタも本当に大したものよ」
「リセルさんの魔力制御はとても素直ですからね、複雑に練らないと威力が出ない魔法をあそこまで単純明快にする技術と研鑽は私も見習わないとです!」
僕らは互いを褒め称え、辺りの安全を確認したあとに少し休憩することになった。この不思議な廃都でも、何故か水のインフラが整備されていて、井戸水なども普通につかえているのも不思議な要素の一つだ。まるで最近までこの廃都に人々が生活していたかのような雰囲気だ。
「水は……うん。飲めそうだ」
「あ、あのー……皆さんのお口に合うか分からないのですが、実は保存も効くパンを作ってきました……!」
「へぇ~!いつも僕らが買ってる硬い黒パンじゃなくて、いわゆる菓子パンってやつだよねこれ!」
「はい!レモネイドバターを使ったシュトーレンという菓子パンです!」
「多種多様なベリーのレーズンがいっぱい入ってるから、一口の満足感も大きいわね」
「うむ、この糖分が身体と脳に活力を湧かせるようだな、んまい」
しばらく仲間たちと談笑して、少しの眠りについた……はずだった……。目を開けると、廃都には大勢の人間が生活している様子が目の前に広がっていた……。その光景に動揺を隠せずに仲間たちを起こそうとしたが、皆がいない……!?ただあるのは、何故か僕を認識しない街の住民たちだった。状況を飲み込めずに呆然と歩いていると、ふと女性の歌声が聞こえてきた。その歌声につられるように歩みを止めずに向かうと、大広場の真ん中にある噴水の前で、踊りながら歌う少女が居た。ただこの娘も僕と同様に、街の住民たちに存在を認識されていないようだった。でも、何故かこの娘を知っているような気持ちが背中を押して、少女に僕はコンタクトを取ろうと思った。
「あ、あの……君は、何故……?」
「自らが追い続ける過去の残余に囚われているようだね、オリジン」
少女の背中には天使のような羽が現れていた。やはり……あの夢の中で出会った『守護天使』の少女だったようだ……。
「やっぱり……君だったんだね」
「そう……貴方がずっと夢で見ていたこの物語からずっと先の未来で、私は待ち続けていた」
「君は……僕たちの何を知っているんだ?」
「知っているよ、ずっと……ずっと!昔から……。でも、まだ私はあなた達に直接干渉することはできない。もし、この先の世界に進んだら、もう一度、夢を頼って……!」
守護天使の少女は僕を見つめながら涙を流して笑顔を向ける。その笑顔は、ずっと昔の記憶の中に居る少女の笑顔とそっくりだった。少女の涙が地面へと落ちると、この世界の全ての物体が崩れて壊れていき、気づくと僕は横になって目が覚めていた。
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