第四十三話 神殿
「うわぁ……すごくおっきいね」
「ああ……。だが、ずいぶん古いものだな」
オハナサンの"村"を後にした一行は、魔獣がいるという神殿の入口に来ていた。
マヘリアが神殿を見上げ感嘆の声を漏らすと、ランスが柱を手の平でなぞりながら答える。テオは、興味深げに神殿の柱や外壁を見て回っていた。
「話じゃ、魔物も出てるってんだ。あんまり、離れんじゃねぇぞっ?」
「あっ、はい、すみません、つい……。でも、これっ、すごいですよっ!」
クロヴィスの声に、テオが興奮した様子で駆け戻ってくる。
「正確なことはわかりませんが、この神殿はおそらく『三族戦争』あたりか、それ以前に建てられたものの可能性が高いです!」
「それって、すごいの?」
「すごいなんてものじゃありませんよ、マヘリアさん! 一級の歴史的資料ですよっ、これはっ!」
「けどよ、なんだってそんなすごいもんが、だれにも知られてねぇんだ?」
「ん? ネリダさんは知ってたよ? クロ」
「いや、まあ、それはそうなんだけどな? コンアイは昔っから外からの出入りが多い場所だろ? そんなすげぇ遺跡が、他でも知られてねぇって、変じゃねぇか?」
「あー」
マヘリアが、わかったようなわかっていないような返事をする横で、テオがむずかしい表情で考え込むような仕草をしている。
「……確かに。この地の神官が把握しているということは、当然、精霊教会にも報告が上がっているはずです。これだけの遺跡……あちらの研究者が放置するとは、とても……」
「…ずっと昔に調査済みなんじゃない? 古い遺跡だし、資料が埋もれてるだけなのかも」
「そんなぁ……。すごい発見だと思ったのに……」
カティアの言葉でがっくりと肩を落としたテオに、リィザがため息まじりに続ける。
「はいはい。あたしたちは魔獣を倒しに来たのを忘れないで」
「……はぁ。
さらに肩を落とし最後尾をトボトボと歩くテオをよそに、一行は神殿内部に足を踏み入れた。
「中もすごい造りですね……。いったい何のための建物だったんでしょうか?」
神殿内部の回廊は、ところどころが大きく崩れてはいるものの、残ってる部分には見事な彫刻が施されており、忘れ去られた辺境の建造物には似つかわしくないものだった。
「何のためって、そりゃ"神殿"ってぐらいだから、神様を祀ってたんだろうよ」
「元々は精霊教会の神殿だったんじゃないか? それなら調査が行われないのも当然だし、これだけの物が造れるのも納得だ」
「そう…ですね。……確かに、そうかもしれません。
…………あたっ…ど、どうしたんですかっ……?」
もはやすっかり興味をなくしたように答えるクロヴィスとランスに、さらに考え込んだ様子で下を向くテオだったが、先頭を歩いていたリィザとマヘリアが急に足を止めたため前を歩いていたランスの鎧に頭をぶつけてしまい、頭をさすりさすりしながら前を向いた。
「人がいるの」
「違うよ、マー。あれは……人じゃない」
一行の視線の先には、数体の人影が所在なさげに立っている。
「なんだぁ…? ありゃあ……」
クロヴィスが目を凝らすようにして見ると、剣や槍を持った人影たちが、こちらに気付いたように向きを変えた。
「どう見ても友好的な感じではないな」
ランスが盾を持つ手に力を込めたのと同時に、人影たちは音もなく一行に向かって駆け出していた。
記 A・E
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