転生したら、大好きなアニソンシンガーのボディーガードだった!

崔 梨遙(再)

第1話  僕は誰だ?

 ー 起きなさい ー


 声がする。


 ー 起きなさい ー


 寝ぼけているのかな?女性の声だ。


 ー 起きなさい ー


 起きろと言われても意識が混濁して起き上がれない。


 ー とっとと起きろっていってるんだよ ー


 怒気をはらむ声にビックリして目が覚めた。


 僕はベッドの上で寝そべっていることに気付いた。


「はい!すみません」


 僕は無条件に謝った。


 ー 詫びはいらない。お前は現状がわかっているのか? ー


「思い出せません」


 ー お前は作家志望の中年だった ー


「確かに」


 ー だが、事故で死んでしまった ー


「そうでした。大好きなアニソンシンガーの女性が握手会で襲われかけたので身体を張って守りました」


 ー そうだ、それが間違いだったのだ ー


「え?」


 ー お前が盾にならなくても警備員が取り押さえていたはずだった。無論、シンガーも無傷だ ー


「僕、余計なことをしたんですか?」


 ー まあ、そういうことだ ー


「……」


 ー 何故、黙る? ー


「凹んでるんです」


 ー まあ、いい。それでだ、お前の死は予定になかった。帳尻を合わせないといけない ー


「僕は生き返るんですか?」


 ー 遅い。もう灰になっている ー


「別の時代に転生するんですか?」


 ー いや、同じ時代に転生させる ー


「別人になるんですか?」


 ー 別人にはなるが、パラレルワールドで転生する ー


「赤ちゃんから育つんですか?」


 ー いや、オッサンだ ー


「少年期や青年期は?」


 ー 面倒臭いから省略 ー


「わかりました。僕は自分の運命を受け入れます」


 ー そうか、それはよかった ー


「今度は何に生まれるんですか」


 ー ボディーガードだ ー


「格好いいですね、誰のボディーガードですか?」


 ー お前の大好きなアニソンシンガーだ ー


「やった!転生バンザイ!!」


 ー ちなみに、お前が行く世界にはお前がいるぞ ー


「え?」


 ー 勿論、厳密にはお前ではない。だが、お前だ ー


「わかりました。共存します。外見は違いますか?」


 ー 全く違う ー


「なら問題無いですね、もし向こうの僕と出会っても無視しておきます」


 ー よし、では行け、毒島トン吉 ー


「ちょっと待て」


 - どうした? ー


「その名前、どうにかならないんですか?」


 ー 気に入らないのか? ー


「はい」


 ー では、毒島トン平 ー


「やめてください」


 ー じゃあ、どんな名前ならいいんだ? ー


「そうですね…相馬瞬とか神崎蓮とか…」


 ー じゃあ、神崎蓮でいいだろう ー


「ありがとうございます」


 ー では、行ってこい。今度は天寿を全うしろ ー



 僕は気を失った。僕の第二の人生が始まった。







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