【詩】冥界の花



冥界に咲く花は美しい

どれほど立派な人間も

この花には勝てまい

嗚呼、この花を踏みつけてしまいたい

そうすれば

一縷の希望も途絶え

絶望の世界に相応しい

本当の冥界が出来上がる


種を蒔いたのは誰だろう

一人でに芽が出たのかもしれない


罪滅ぼしの涙が落ちてゆく

奈落の底には人食いが居て

涙の持ち主を

誘い込む


迷いながら

道を歩き

ふと

道を踏み外したのだ


落ちて

喰われて

魂が花に生まれ変わって

妬み憎しみの対象になって

些細な希望になって

おそらくそれは

踏みにじられるのだろう


輪廻を繰り返し

永遠の牢獄の中を彷徨い

果てはいったい

何があるのか


無限に続く時間に

魂は擦れ切れ

無になり悟りを開いても

私は私なのだろう


嗚呼、できることならもう一度、この冥界の花になりたい……



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