幸運集めのフォークローバー 16

「松野は帰ったし、和歌子もいない――よっしゃ、ついにこのチャンスが来たか」

 松野が店の手伝いに向かっていなくなった後、孝慈はテーブルに身を乗り出して聞いてきた。

「加澤」

 何を聞かれるか、少なくとも彼女のことであるのは明白だった。

「――お前の、松野との関係は?」

 そうら来た。

「毎日本屋で会うほどにいつのまにか仲良くなってたなんて、お前らもなかなか片隅に置けないよ」

「違うからな!」

 僕は即座に否定する。

「えー、なんでよ」

 孝慈はテーブルをコツコツ叩きながら問い返してきた。

「だってお前ら、ケーテで向かい合ってた時すげえ仲よさげに見えたよ?

 雑談が超盛り上がってた。ありゃ絶対両想いだね」

「いいや、それは言い過ぎだと思う――和歌子ちゃんがいなかったら会話も止まってただろうし。

……というか勝手に決めつけないでよ」

「根拠は?」

「……だって松野はまだ、僕に慣れてないみたいっていうか……その証拠に今だって、バイトのことで早く帰っちゃったし」

「うーん、俺、それは違うと思うな」

 孝慈は腕を組んで言う。

「バイトがあるんなら、図書館で手伝いなんかしないでさっさと帰ってるはずなんだよ。

 なのに松野は時間ギリギリまで俺たちといた。

 ウワサが苦手なあいつが、わざわざバスケ部の見学までして」

孝慈は「クラス会」とポツリとつぶやく。

「『部の見学してた女子、だれ?』ってバスケ部でちょっとしたウワサになると思うよ。

 なのにあいつ、クラス会の時も自分だけバイトで行けなくて、もし変なウワサが立ったら、って気にしてたんだぜ。

 それくらい自分のウワサを気にしてるのに、

『加澤が来るまでバスケ部の見学ってことで見ててくれ』

だなんて俺の提案、そんな目立つことをわざわざ了承して――おかしいだろ?」

「単に、バイトで都合が悪いってことを、言い出しづらかったんじゃないの?」

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