幸運集めのフォークローバー 14

 体育教師だけあって、いつもスポーティーな服装をしているイメージだが、この日に限ってスーツを着ているということは、そういう類いの不幸かもしれない。

 ただ、写真の中のうなだれて壁に手を当てている先生には、もっと別の何か、耐え難い後悔があるようにも見えた。僕は言う。

「その線で考えるなら、何か、もっと個人的な、だけど外せない大事な用事があった、とか」

「それは何ですか?」

「うーん、今のところは浮かばないや……そうだ、稲田先生本人に聞いて情報を引き出せないかな?」

 僕はさっき時計台で書いたメモを確認する。

「『未来写真のことや、写真で見た光景のことを自分たち四人以外に話さなければOK』」

 未来写真は和歌子が作ったもので、僕たち以外には見えないからいい。

 未来写真というものの存在を話さず、明後日の用事についてそれとなく尋ねてみれば問題ない。

「あ、帰っちゃう」

 松野の声に顔を上げると、先生が入口のカウンターにやってきて、本を借りる手続きをしたところだった。

 孝慈が急いで声をかける。

「何借りたんスか?」

「げ、お前ら」

「先生、聞きたいことがあるんですけど」

 僕が言うと、先生は借りた本をトートバッグに押し込んで、こちらに背を向けた。そしてそのままスタスタと歩き出す。

「え、ちょっと!?」

「急いでるから、明日にしてくれ!」

「明日夏休みっスよ? それより先生、明後日って――」

「じゃあな」

 先生は孝慈の質問には耳も貸さず、そのまま逃げるように図書館を出た。

 外に車を停めていたらしく、先生はそのまま乗用車に乗り込んで走り去ってしまった。


 孝慈は首をひねる。


「どうしたんだ? そうとう急いでたみたいだけど」

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