第二章 幸運集めのフォークローバー 6
用事が終わるまで体育館で待っている、と孝慈たちは言っていた。
僕は現校舎と旧校舎とを繋ぐ廊下を歩く。今は昼だが、夕方になると西日のきつくなる廊下だ。
この廊下を曲がってまっすぐ行けば、旧校舎の体育館に通じている。
松野は体育館、青いネットで区切られた二面コートの端っこにいた。
練習が始まる直前の、バスケ部のシュートのようすを体育座りでじっと見つめている。
僕は声をかける。
「ごめん、遅くなって。それで、コージはどこに?」
「……あっち」
体育館から入って左側、バスケ部側のコートを松野が示した。
松野の視線の先、そこに孝慈はいた。
半袖のワイシャツを着たまま、バスケ部のちょっとしたウォーミングアップに混じって。孝慈はバスケ部員とワンオンワンをしていた。
腰を落として両手を広げるディフェンスの孝慈。
彼がシュートに向かう部員の動きを阻んで左右に動くたびに、床を鳴らすシューズの音が小気味よく響く。
「コージ、お前めちゃくちゃ良いな」
ワンオンワンを眺めていたバスケ部の上級生が言う。
「サンキューっす、先輩」
「なんだったら今からバスケ部に入っても良いんだぞ。お前なら一年生にしてベンチ入り間違いなしだ」
「途中入部っすか、ハハハ。――じゃあ俺はこのへんで」
ワイシャツ姿の孝慈は先輩の冗談とも本気ともつかない勧誘を適当にかわすと、僕たちのほうに走ってきた。
「よう。加澤が遅かったから、バスケ部に混じってた。カラダ動かしたくなっちゃって」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます