第一章 座敷わらし 27

「――まぁ、そういうことで」

 和歌子が葉が一枚だけ集まった頭の髪飾りを指差し、二度目の説明を終える。

「ようは結人さん達と協力して不幸をあと三つ解決すれば、何も悪いことが起きなくて済むということです」

「……なるほど」

 孝慈は皿をテーブルの上に置き、和歌子の話にじっと耳を傾けていたが、

「よっしゃ、俺も協力するよ」

と急に元気な口調で片手を挙げた。

「はやっ」

僕は思わず立ち上がって孝慈の腕をつかむ。

「コージが真っ先に名乗りを挙げるなんて……いったいどういう風の吹きまわしだ?」

 孝慈はニヤリと笑う。

「明日、グループワークの班決めがあるだろ?」

「だけど……それがどうかしたのか?」

 グループワーク。

 僕たちの通う歌扇野高校では、この時期に一年生によるグループワークが行われる。学校の大きなイベントの一つだった。

 テーマは歌扇野の歴史や文化、地域活性化、地元企業の技術の紹介など、歌扇野にまつわることなら基本的に自由。

 期限は発表会がある十月の頭。

 もう夏休み前二日前だというのに、1Aは未だに班が決まっていない。

 先生が忙しくて、期末試験明けの今日にも班決めができなかったとか。

 孝慈は指折り数えながら言う。

「まぁ聞いてくれな。俺は貴重な夏休みを消費せず最短でグループワークを仕上げられる道を考えていた。

 明日も楽ができそうなグループに入るつもりだった。

 だが、たった今、気が変わった」

 孝慈はテーブルに両肘をのせ、和歌子をちらりと見る。

「座敷わらしちゃんの話を聞いて、閃いたんだ。俺がグループを作ることにして、テーマは『歌扇野の街並みの昔と今の比較』にしようとな」

 僕は孝慈の話を聞いて唸る。

「昔と今の街の比較? またお前らしくもない、難しそうな題材だな……。それと和歌子ちゃんと、いったい何の関係が?」

「そこなんだよ。旧校舎ができたのって、何十年も昔だろ。分霊でしか移動できないとはいえ、昔からいる座敷わらしなら、いろんなこと知ってるはず。当然この街のことにも詳しいはずだ」

「そうなの?」

 僕が和歌子を見ると、コクコクとうなずいて言った。

「はい。わたしばかりお願いをしているようで、正直申し訳なかったんです。

 でも、それならわたしは皆さんのお役に立ちつつ、気兼ねなく協力をお願いできますよ。わたし、こう見えて歌扇野の生き字引ですから」

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