第一章 座敷わらし 14 (和歌子)

 夕暮れの旧校舎。体育館には、夕陽の光が細長く流れ込んでいた。

 バスケ部の練習も今は行われていないようで、中は完全に静まり返っていた。

 和歌子はそのまぶしさに目を細めると、学校じゅうに気を集中させて、『幸運のチカラ』の持ち主の気配を追いかけた。

 歌扇野高校の旧校舎は、来年から始まる取り壊し工事のため、一部の特別教室をのぞいて封鎖されていた。

 大きな改築工事が過去にあることはあったが、基本的には何十年も昔からある、歴史ある旧校舎。体育館も当然、設備が古くて通気性もあまり良くない。

 春に完成したばかりの新しい体育館では、そのあたりがかなり改善されたというのが、和歌子が生徒達の立ち話を聞いて得た情報だ。

 このうだるような暑さも、冷え症の和歌子にはあまり気にならなかった。

 それどころか、いつも薄手のカーディガンが手放せない。

 和歌子が気にしているのは、暑さよりも日焼けのほうだった。

 和歌子は体育館を出ると、渡り廊下の地面に窓枠から落ちている日光を、ケンケンをする要領で避けた。

 西日を浴びて影が伸びているせいで、外からは建物自体が傾いているように見える。

 旧校舎は生徒達からの評判もあまり良くない。

 もっとも、現在では旧校舎に隣り合うかたちで新校舎が作られたため、体育など一部の授業を除いては使われていないが。

 歴史ある旧校舎は、今年の夏休み、いよいよ完全に取り壊されることになっていた。

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