第一章 座敷わらし 14 (和歌子)
*
夕暮れの旧校舎。体育館には、夕陽の光が細長く流れ込んでいた。
バスケ部の練習も今は行われていないようで、中は完全に静まり返っていた。
和歌子はそのまぶしさに目を細めると、学校じゅうに気を集中させて、『幸運のチカラ』の持ち主の気配を追いかけた。
歌扇野高校の旧校舎は、来年から始まる取り壊し工事のため、一部の特別教室をのぞいて封鎖されていた。
大きな改築工事が過去にあることはあったが、基本的には何十年も昔からある、歴史ある旧校舎。体育館も当然、設備が古くて通気性もあまり良くない。
春に完成したばかりの新しい体育館では、そのあたりがかなり改善されたというのが、和歌子が生徒達の立ち話を聞いて得た情報だ。
このうだるような暑さも、冷え症の和歌子にはあまり気にならなかった。
それどころか、いつも薄手のカーディガンが手放せない。
和歌子が気にしているのは、暑さよりも日焼けのほうだった。
和歌子は体育館を出ると、渡り廊下の地面に窓枠から落ちている日光を、ケンケンをする要領で避けた。
西日を浴びて影が伸びているせいで、外からは建物自体が傾いているように見える。
旧校舎は生徒達からの評判もあまり良くない。
もっとも、現在では旧校舎に隣り合うかたちで新校舎が作られたため、体育など一部の授業を除いては使われていないが。
歴史ある旧校舎は、今年の夏休み、いよいよ完全に取り壊されることになっていた。
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