第39話 しっぽOKくもOKな世界
「ふぅー」
私は今、温泉を堪能している。
この世界に飛ばされた時のことは忘れもしない。
狩りの帰り道。横槍が入って、獲物の割に疲れていた。
クラっとして、世界が二重に見えた。
グラッとして、身体に力が入らなくなった。
気づいたら、知らない森にいた。
獲物を持っていたのはラッキーだった。
水場を探しながら、森をさまよう。
この森はどこまで広いのだろう。
どこかに集落はないか。人間の街はないか。
私は生きられるのか。私は帰れるのか。
3日程歩いて、ようやく木がまばらになってきて、
遠くに街のような物が見えて、あそこまで行けば、
と思って、そこで意識が切れた。
目が覚めたら知らない建物で、人型の知らない生き物達が、こちらを伺っていた。
言葉は通じなかったが、身振り手振りで、あちらに介抱の意図があることを理解した。
色々な食べ物を出してくれて、食べられるかどうか、試してくれた。
薬みたいなものもくれて、効くかどうか、確認していた。
部屋から出るのは恐ろしかった。
知らない生き物達は、私には優しいが、何か激しく議論をしている時もある。
ここから出ていくには情報が足りなすぎる。
この世界に踏み込む踏ん切りがつかないでいたある日、
いつも世話をしてくれる生き物が、身体の形を隠せる服を渡してきた。
着替えるとどこかへ連れて行くみたいだった。
知らない生き物について行く。
外は街だった。知らない生き物の国だった。
知らない生き物は遠くに行く乗り物に乗るようだった。
この国はどこまで続くんだろう。
半日ほど移動した後、更に歩く。
森の中へ入って行く。多分来た森とは違う森だ。
しばらく歩いてようやく、目的地周辺に着いたようだった。
それからは怒涛の展開。
そこにあったのはまさかの元の世界の建物。
えっこれ消えた時位相シフト理論と言うのが出ていたけれど、本当に!?
幸運なことに建物の自動翻訳機能が起動できて、知らない生き物と意思疎通ができるようになった。
知らない生き物は温厚でお人好し。建物に興味津々で、お風呂は苦手。
この森には保護されていた時に食べたことのある実や獲物がいる。
拠点にできそうな部屋があって、元通りに動くようにしてもらえた。
ようやく生きていける目処がついた気がした。
少しして、真っ白い蜘蛛が来た。
知らない生き物はネッターという。自分は猫と認識されたらしい。
この世界にも猫はいるんだ。少し安心した。
白い蜘蛛は森の生き物で、塔の外では言葉は通じないけれど、
身振り手振りで一緒に狩りができるようになった。
話し方の通り子供で、でも魔法がすごい。弱点を補い合えるいい相棒になった。
もし元の世界に戻れたら、元の世界の蜘蛛にも話しかけてみようかな。
ネッターさんは珍しい生き物を保護する研究者らしい。新しい仲間が増える。
相棒のゆっくんは行動力がすごい。ネッターさんもタジタジだ。
ネッターさんはモフモフ好きで、ゆっくんにベタ甘い。
私もその恩恵に預かって、今こうして温泉に入っている。
「色々あったなぁ…」
この世界は私を受け入れようとしてくれている。
ようやく、ようやく息がつける気がした。
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