第67話 UNOと生田神社

 そして翌、火曜日。

 僕たち1年生は朝から新幹線に乗り、鉄路で神戸の地に降り立った。


 ちなみに新幹線の中では、遠足の定番パーティゲームたるUNOで、おおいに盛り上がった。

 旅行の時のUNOってなんであんなに盛り上がるんだろうね?


 もちろんひまりちゃんはUNOも上手で、


「はい、あがりー! いっちばーん!」

 いつも早々と一番あがってしまい、逆に僕は毎回ドベ争いを強いられていた。


「UNO! あがりです」

 丁寧に丁寧にプレイして手堅く2番であがる雪希と、


「ドロー4でUNO! 返せなきゃ俺の勝ちだ!」

 抜群の勝負センスで、ここぞでは絶対に負けない高瀬。


 3人とも三種三様に強くて、特に取り柄のない僕は3人にフルボッコにされてしまった。


 ドロー4とかの特殊カードを切るタイミングも、結構センスいるよね……。

 

 それはさておき。

 神戸の中心とも言えるJR三ノ宮駅をスタート地点として、各班それぞれ1日を使っての自由行動が始まる。


 が、しかし。

 学年のほとんど全員が、まるで指示でもあったかのように同じように動き始めた。


 JR三ノ宮駅の北側に出ると、ほぼ隣接したサンキタ通りを西に向かい、直角に交差する生田ロードで右折して、北に向かう。


 みんな手に遠足のしおりを持っていて、それを都度都度、確認している姿が見えた。


「神戸は山がある方が北で、海がある方が南っと。これサラッと書いてるけど、すっげー分かりやすい情報だよな」

「思っていた以上に山が見えるもんね」


 そんな声も聞こえてくる。

 

 特に迷うこともなく、スタートしてから物の数分で、僕たち校外学習の1年生団体様御一行は、生田神社に到着した。


 ここまでのルートは、遠足のしおりに記されている、僕が検討に検討を重ねて見出した、初手の最お勧めルートだった。


「わわっ、本当に駅のすぐ側の街の真ん中に、いきなり森と神社があるよ?」


 いきなり目の前に現れた生田神社に、ひまりちゃん驚きの声を上げ、


「周りを背の高いビルに囲まれているのが、なんとも不思議ですね。そう広くはないですし、ビルの合間に入り口があるので、これは知らないと見落としてしまいそうです」


 雪希は興味津々といった様子だ。


「駅近で、由緒正しい神社らしいから、神戸に来たんなら見ない手はないと思ったんだよね」


 話のついでに、僕は生田神社の簡単なエピソードも紹介しておく。


「ここは源平合戦の舞台にもなってるらしいよ。名前は忘れたんだけど、平家の武将がここに陣を引いたんだってさ。一ノ谷の戦いだったかな」


「ふへぇ、源平合戦とかすっご~い! れっきし~!」


「源義経が『鹿が下りれるなら、馬が下りれないはずがない』と言って、急な斜面を駆け下りたんですよね」


「そうそう、それそれ。あと洪水や地震、空襲、火災や雷で幾度となく消失しては再建されてきたから、本来の神様とは別に『蘇る神』って信仰もあるんだって」


「それ、なんかすごくない? だって普通は、御利益ないじゃん! って思うところでしょ?」

「ピンチをチャンスに変える逆転の発想ですね」


「そういうのも含めて、なにせすごい神社らしいんだ」


 僕らが抱いたような感想は、おそらく皆も思ったのだろう。

 1年生のほぼほぼ全員が、まずは生田神社に来ているようだった。

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