第5話 一緒に寝れない!


「いろはちゃん」


「何ですか」


「私、お風呂に入ってないの」


「はぁ……。知ってます」


「それが何を意味するか、分かる?」


 私は考える。

 お風呂に入ってない。――つまり、不潔。しかも梓は、飲酒したので酒臭い。てことは、ただ迷惑ってことですね。


 ここは、『私の家にいてはいけない』と答えましょう。


「私の家にいてはいけないってことですね」


「ひ、ひどいよ。いろはちゃーーん!!」


「違うんですか? あと、まだ酔っ払ってます?」


 突如、梓は泣き始めた。

 酔っ払いの対応に不慣れな私は困惑する。


「お風呂に入ってないってことは、大好きないろはちゃんと一緒に寝れないってことだよおおー。うわあああーん」


 一緒に寝る気でいたんだ……。

 まあ布団はワンセットしか無いから、丁度いいですね。


「早くお風呂に入ってきて下さい」


「分かったけど、服無い!」


「隣の自分の部屋から取りに戻って下さい」


「いろはちゃんの服がいい!」


「しょうがないですね。今回は特別に私のパジャマと下着、貸してあげますよ」


「その答えを待ってた!」


「はぁ……」


 二度目の溜め息。


 不思議と嫌悪感は抱かなかったが、それでも悪用されるんじゃないかって、少し不安だった。

 あとサイズとか大丈夫なのだろうか。


「取ってきますね」


 私は自室のタンスを開き、服があるか確認する。幸い、予備の下着とパジャマの在庫があった。


 だけど、さくらんぼ柄のパジャマとか幼稚だなぁ……。雲の柄のパジャマもうーん。


 あとで梓に聞いてみよう。



 ――洗面所に戻ると、浴室に入っているはずの梓がまだ居た。


「お風呂、入らないんですか?」


「……ぃてほしぃ…………」


「……え?」


「いろはちゃんに扉の前で待っててほしかったから入れなかった」


「そ、そうですか」


 顔が熱くなるのを感じた。少しだけドキッとした。梓お姉ちゃん、罪深い……。


「いかないで、ね?」


「分かりました」


 私は梓がお風呂から出てくるまで、扉の前でずっと待つのだった。


 

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