第97話

意識を奪ったソフィアを肩に担いで、冒険者ギルドの地下にある個室に運んで座らせた。


縄で上体と足を縛り、椅子にくくりつけておく。


「尋問するの?」


カレンが無表情に聞いてきた。


感情を出さないようにしてはいるが、流血沙汰は苦手なはずだ。


俺がこれからしようとしていることを想像しているのかもしれない。


因みに、マイヤーには通常業務に戻ってもらっている。


「口を割らせるしかないだろうな。」


「そう。」


「拷問は好きじゃない。」


「知ってるわ。」


カレンは苦笑しながらそう答えて業務に戻って行った。


好きだろうが嫌いだろうが必要に迫られればこなす。仕事とはそういったものだ。


俺がそのようなドライな考え方をすることをカレンは知っている。だからこそ席を外したのだ。


「そろそろ気を失っているフリは終わりにしないか?」


そう言って、ソフィアの胸部を軽く蹴った。


縛られた彼女はその反動で椅子ごと背後へと倒れ、背もたれが床に接触する。


「···荒っぽいのが好きなようね。」


一瞬の沈黙の後、ソフィアがそんなことを言った。


絞め落とされたとはいえ、すぐに回復できなければ特殊部隊員は勤まらない。


「あまりやりたくはない。だから、手間を省いてもらえるとありがたいのだが?」


「私は執行官よ。任務を遂行するために来た。他にやましい事はない。」


さて、どうしたものだろうか。


殺人や誘拐の未遂犯、しかも現行犯だ。


しかし、同じ執行官、そして裁定者でもある。


「任務ということは、俺の殺害及びこの支部のギルドマスターを誘拐、監禁することを誰かに命じられたと考えたらいいのか?」


「好きにすればいい。」


「その場合はおまえの口を封じた方がいいだろうな。下手に生かしておくと本部からくだらない叱責やペナルティ、詮索などを受けるかもしれない。」


「·················」


「同郷のよしみだ。チャンスをやろう。」


「チャンスだと?」


余裕がないのか、口調が男になった。


まあ、もともとは男だから当たり前だが、精神状態を知るのにちょうどいい。


「俺に殺意を向けたことで反撃されて命を落とす。真相究明は難しくなるだろうが、本部の執行官が乱心して刃を突きつけてきたということで押し通す。」


「その程度で本部からの追求がなくなるとでも思っているのか?」


「さあな。少なくとも、問答無用でこちらを容疑者に仕立てることはなくなるんじゃないか?それに、こちらには証人もいるから、本部や第三者が絡んでいるとしたら有耶無耶にする可能性も低くはないと思うがな。」


ソフィアは俺に向けていた睨めつけるような視線を外し、押し黙った。




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