第80話
「人数と距離を教えてくれ。」
ミオに状況の詳細を確認する。
「合わせて四名。ひとりが先行して開口部から5メートルの位置。そこから3メートル上方に二名、残り1名は少し離れた位置で静止しているわ。」
人数が一致した。
キョウチクトウの煙がおさまるまでに方をつけるつもりだろうか。それとも他にも人員がいて、入口付近を固めている可能性もあった。
「相手も気配察知のスキルを持っているかわかるか?」
同質のスキルを持つ者同士は、ある種の共鳴のように互いの存在を知るそうだ。
「いいえ。ただ、気配察知はスキルではなく訓練で備わっている者もいるわ。」
武芸の達人や我々のような特殊部隊出身者は、後天的にそういった技術を身につけている。こちらの世界では極めて稀な人種ともいえた。
「おそらく相手を指揮しているのも俺たちと
「もしかして、それが祖父に毒を盛った相手?」
「確証はないが、可能性はある。」
そう答えると、ふたりは目線を互いに交わした。
「ナオさんは味方だと思っていいんだよな?」
「彼が敵なら今頃三人のうちの誰かが死んでるわ。」
「違いない。」
ディレクとミオはふたりだけの会話で結論を出し、笑みを見せた。
「そう思ってくれるなら信頼には答えないとな。先行している奴の詳しい位置を教えてくれ。」
彼らにしてみても、俺の一挙手一投足をうかがっていたのだろう。
なんのことはない。
最初から状況を見守りながら、敵味方の判別をされていたということだ。
「開口部まであと3メートルくらいよ。移動速度からするとすぐに到達するわ。」
「わかった。半分は受け持つから後は任せた。」
俺はそう言って、気配を消しながら開口部へ近づいた。
小石が転がる音が聞こえ、地に足をつけるような音がする。
相手の動きをイメージして呼吸を合わせた。
俺が開口部から飛び出すのと、相手が最接近するタイミングが一致する。
外へと体を投げ出しながら、腕をのばして相手の衣服を掴んだ。
「ぬおっ!?」
想定外の出来事に、相手が驚きの声を発する。
投げ出した体の重みが相手に伝わり、ロープに掴まっていた男が落ちまいと両腕に力を入れた。
反動で崖のような傾斜面に足をつく。そのタイミングで腰から抜き出したナイフを相手の急所に突き刺して手首を捻った。
即死した男は自重で落下していく。
俺は奴が握っていたロープを掴み、それを支点に両足で傾斜面を連続で蹴って半円を描く形で駆け上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます