第78話

「ナオさん、所属はどこだった?」


溝がある所まで来て煙を回避していると、ディレクがそう聞いてきた。


ここまできて答えを濁す必要もないだろう。


海兵マリーンだ。」


「ああ、なるほど···」


「だから盗賊団をソロで殲滅していたわけね。」


ディレクやミオがそう言うのは、他の特殊部隊から見ても米海兵隊が猛者揃いだというイメージが強いからだ。


まず、海兵隊は入隊後の教育期間が最も長く、苛烈であるといわれている。海兵隊員は除隊後に他の軍隊に入っても練兵訓練を受けることはほぼない。しかし、その逆の場合はどれだけ功績のある者であっても、一から訓練を受ける必要があった。


海兵隊の過酷な所は徹底的に個性を排除されチームの一員として力を発揮すること、命令に絶対服従することなどを強いられることだ。


また、M海兵隊CMマーシャルアーツAPプログラム茶帯タンベルトと、海兵隊上級射手章のRifle Marksman以上を取得できなければ海兵を名乗ることは許されなかった。


MCMAPは、空手や柔道のようにベルトの色で階級が決められている。タンベルトというのはその最下位である。


色的には五色あり、タン、グレー、グリーン、ブラウン、ブラックが存在する。グリーン以上にはインストラクターも設定され、最上位のブラックには赤いループが入ったトレーナーが君臨する。さらにこの赤いループの数で追加レベルを表しており、最高位は五本のレベル6といわれていた。現役を退いてから久しいため、現状がどうなっているかは知らない。


因みに、Rifle Marksmanというのは射撃の名手を指す言葉であり、海兵隊の基本能力の高さを表している。


このように海兵隊員は最下級の二等兵から高い実力を有しており、世界最強の軍隊の一つだといわれているのだ。


「俺は魔法に長けているわけではないからな。この世界に来て自分にできることを探したら、MCMAPくらいしか活用するものがなかった。」


それ以外にも、海兵隊での経験が自身の性格や精神面にも影響を及ぼしている。


感情のコントロールやチームワークを疎かにしないのは、MCMAPと訓練課程で培ったものだといえた。そして、それらが執行官という職務に推薦される一因となったことも理解している。


もちろん柔術を基にしたディフェンドゥーや、その改良版であるオニールシステムの流れを組むグリーンベレーの格闘術がMCMAPに劣るというわけではない。


しかし、ブラックベルトでかつ追加レベルの海兵隊員は、素手で銃を持つ相手に挑むことができる技術や胆力を要求される。そういった面では、素手による戦闘力は他を卓抜していると考えられていたのである。


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