特別編 静かなる足音
「部隊、到着致しました!」
「暫く休憩を取った後、また出るぞ」
「ハッ!」
精鋭部隊と思しき人ならざる衣服を纏った小隊の長を引き下がらせ、同様に鎧の上の胸にほぼ同格の徽章を付けた兵士と彼は語る。
「酷い有様ですね」
先刻、オルス・クラインが零火の白騎士の叩き落としに成功した奴隷商周辺には痛々しい無数の肉塊と残骸だけが散らばっていた。
「あぁ、恐らく魔物の仕業だろう。だが」
「はい。これは余りにも乱暴だ」
「この行為自体に大した意味はないんだろう。あくまで手段に過ぎない、只の腹いせ」
「やはりグレイモアでしょうか?」
「まだこれだけでは……襲撃時の痕跡を一切残していないのなら、あるいは別の種族の」
「我々人類に平穏は訪れるのでしょうか」
「それは永遠の課題になるだろうな」
「えぇ、同感です」
「隣接する人工物をしらみつぶしでいい、兎に角、いち早く手掛かりの入手を急いでくれ」
「了解!」
「……」
メリス・ウィルクリムは地面に残された微かな足跡の土を拾い上げると、ため息を吐くようにして囁いた。
「待っていろ、オルス」
その一言を残し、すぐさまその場を後にした。
まだ誰も最悪の悲劇を招くとは知らない。
この選択が、全てを。
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