第22話



 歯磨きをしたあと、俺たちはギルドへと向かおうと思ったのだが、まだ一度も行っていなかったので、場所を知らなかった。


「そういえば、リアたちは冒険者登録してるのか?」

「一応、してるわよ」

「……そうなんだな。この街のギルドの場所は知ってるのか?」

「ちょっと、それも知らなかったの?」


 少し呆れた様子の問いかけに、俺は苦笑を返すしかない。

 リアがそういう反応をしてしまうのも無理はないだろう。

 俺は現在冒険者のような活動をしているのに、ギルドを知らないというのは間抜けな話だからだ。


「まあな……。そういうわけで、教えてもらってもいいか?」


 といっても、知っている人に教えてもらえればいい。

 まあ、愛想尽かされない程度に知識を蓄える必要はあると思うが。

 そんなことをぼんやりと考えながら歩いていくと、ギルドに着いた。

 建物は非常に大きく、ギルドを示す看板のようなものもある。


「おお、ここがギルドか……大きいな」

「まあ、この街のギルドは結構大きい方ね。とりあえず、中に入りましょうか」


 そうなると、ギルドで扱うことも多いんだろう。迷宮の攻略をする冒険者が増えれば、それに対応するための職員も増やす必要がある。


 規模が大きくなればさらに冒険者が集まり……いか無限ループ。

 その好循環に乗ったのがこのギルドなんだろう。

 中へと入った俺たちは、受付へと向かう。

 現在受付待ちの人が数名並んでいるため、俺たちもその列の最後尾についた。

 全員で並ぶと邪魔になるということで、俺とリアの二人だ。

 アンナにはナーフィの面倒を見てもらっている。


「とりあえず、俺の冒険者登録をして、それから近隣の迷宮の情報を知りたいんだけど、ここで聞けばいいのか?」

「ええ、そうよ」


 リアが俺についているのは、分からないことがあった時に確認するためだ。

 俺たちの順番になったところで、ギルド職員がすっと頭を下げてきた。


「おはようございます。本日はどのようなご用でしょうか?」

「俺の冒険者登録を行いたい。それと、この街の近隣にある迷宮を知りたいんだが」

「分かりました。それでは、こちらの用紙に記入をお願いします。あっ、文字は書けますか?」


 ……いや、たぶん書けないだろう。

 異世界召喚された特典なのか、文字の読みに関しては問題なかったが、さすがに日本語を書いてそのままは通じないだろう。


「あたしが代筆するわよ」

「……それじゃあ、任せた」


 リアが冒険者登録に必要な情報を書いていく。といっても、俺の名前や冒険者登録をしたことがあるかどうかなど、それほど必要な情報はなかった。

 書き終えたところで、すぐに冒険者カードは手渡された。

 渡された冒険者カードを収納魔法にしまっていると、ギルド職員に問いかけられる。


「こちらで登録は完了になります。それで、近隣の迷宮ですね。難易度はどのくらいにしましょうか?」

「……リア、どのくらいの難易度がいいと思う?」

「そうね……。とりあえずEランク迷宮に行ってみましょう」


 Eランクか。冒険者にはGからSまでのランクがあるそうだ。

 今回挑戦しようとしているのはEランク。最低ランクから二つ上のランクになるわけだが、リアは大丈夫だと判断しているんだよな。

 四人で戦闘するということを考えた上での判断なのだろう。

 ……まあ、俺が決めるよりはリアの方が判断できるはずだ。


「かしこまりました。それでは、街の東門から出てすぐのところにあるウッドン迷宮と、その先にあるヌラヌラ迷宮の二箇所がいいかと思います。二箇所とも門を出れば見える位置にありますので迷うことはないと思います」


 東門ね。それだけ聞ければ十分だ、と思っているとリアがさらに質問する。


「出現する魔物はどんなものなの? あたしたち、剣で戦うことしかできないから、あまり硬い敵や物理攻撃に耐性のある魔物が出る迷宮は避けたいんだけど……」


 な、なるほど。確かにそうだ。

 ハンドガンが通用する程度の魔物であれば良いのだが、それが分からない。


 冒険者ならば苦手な相手でも倒せるようにした方がいいのかもしれないが、それはあくまで遭遇した場合などだろう。

 今回のようにレベル上げの段階で苦手な魔物を選ぶ必要はない。


 リアがついてきてくれて良かったな。


「そうですね。それでしたら、ウッドン迷宮がよろしいかと。スモールウッドマンという、木の魔物が出現しますが、剣であれば問題なく戦えると思います。ヌラヌラ迷宮は、スライム系の魔物が多いので核を破壊するためにも、魔法がないと大変ですね」


 スライムか。核を破壊すれば倒せるのか。

 ハンドガンがどの程度通用するのかの指標として戦ってみるのはありかもしれないが、まあひとまずはウッドン迷宮に行けばいいか。


「分かったわ。ありがとね」


 リアが頭を下げ、俺も同じように礼をした。

 待ってくれていたアンナとナーフィとともに、ギルドをでる。

 途中、解体などを受け持っている受付も見えたが、それはまた後でいいか。

 くるりと振り返ったリアが、アンナたちに声をかける。

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