第14話 悪の召喚士が放つ魔物の群れを、まとめてリバースさせちゃうZO❤

 オレたちは、盗賊団のアジトに到着した。

 ここから盗賊団は、魔物を操っているという。


 見たところ、廃城のようだ。

 屋根のない城に、盗賊団が集結している。


「ギルドの情報によると、ここが敵のアジトみたいだな」

 

 聞くと、元サブマスターが、魔王の手下になっているというのだ。


「ジュライ王子、あの人物ではないでしょうか?」


 チチェロが、集団の中央を指差す。


 綿が剥き出しになった玉座に、つばの広いとんがり帽子を被った中年男性が。

 身体の大きなハーピーを従え、配下の盗賊たちに指示を送っている。


「エミルジョンの街へ向かった部下が、戻ってこないんだが?」


「誓って、逃げたって線はねえ。全滅したんだろう」


「なんだと? エミルジョンの冒険者ギルドは、俺が事態を把握している。あそこに、街を守るだけの戦力はねえはずだ。王族と連絡を取り合っているなんて情報も聞かないし」


「となると、とんでもねえ冒険者が乗り込んできたってわけか」


「ならばこちらの兵力が減る前に、俺自身が追っ払ってやろう」


 魔術師がハーピーの背に乗って、飛び立とうとした。

 

『氷の精霊ちゃん。ごきげんよう。王子だYO。今日も暑いねえ。そんなときは、クールなキミの顔を見るのが癒やしってもんだよ。でも寒くなりすぎて、寒暖差でカゼをひいちゃうかな? そんなときは、またキミに看病してもらうんDA☆ これって、マッチポンプってやつ?』



「ギョエエエエエエエエ!」


 

 ハーピーが、飛び立てずに嘔吐する。美しい羽根が、オレの氷結魔法で凍りついていた。


「な、なんだってんだ!?」


「敵だ! やっちまえ!」


 盗賊団も、敵を迎え撃とうと武装する。


 だが、親玉を無力化されてパニックに。


 チチェロは盗賊団の頭目を撃退し、クッコ姫に預ける。


 さらわれた人々は、フゥヤがスケルトン兵を使って助け出す。


「くそが! 冒険者共か! せっかくギルドを抜けて、好き放題に暴れられるって思ったのに!」


「観念してください! あなたはもう逃げられません!」


「うるせえ死ね!」


 魔術師はヘドロのような液体を喚び出して、チチェロに放つ。


 これが、毒魔法か!

 

「危ない、チチェロ!」


 オレはチチェロをかばって、毒をまともに受ける。


「王子!?」


 すっかり、オレは酸まみれになった。

 服がシュワーって音を立てながら、泡を吹く。

 

「なーに。ラッキースケベがオレで悪かったNE☆」


 言霊を放つと、酸が一瞬で乾燥した。

 こんなこともできるのか。初めて知った。


「なんてヤロウだ!? 俺の酸が通じないなんて! こうなったら!」


 特大の魔方陣が、術師を中心にして地面に広がっていく。


「いでよ、デーモン!」


 異形の悪魔が、術師によって喚び出された。顔がサメで、こめかみには牛の角が生えている。人間の肉体を持つが、その皮膚には術式を込めた入れ墨が。あの術式で制御されているのか。


 騎士団が束になって、悪魔へと向かっていく。


 だが、悪魔は太い腕をふるっただけで、騎士団をぶっ飛ばす。

 

「王子を……よくも!」


 チチェロが、オレの制止を聞かずに前へ出た。剣を手の中でクルンと回転させて、悪魔へと突撃する。


「ムダだ! 大の大人が束になっても敵わないデーモンに、女一人で勝てるもんか」


 術師は、勝ち誇っている。


 チチェロは、モンスターの首をあっさりと打ち落としてしまった。


 首を斬られて、デーモンが消滅していく。


 これが、勇者の血か。でも、敵には教えないでおいてやろう。


「え」


 さすがのテイマーも、一瞬のことで唖然としている。

 

『魔方陣クンおはー。どうしたのかな? キミの仕事は、ただ女性のスカートの中を除くくらいなのかな? そんなんじゃダメだぞ。仕事SHI・RO☆』



「ぐええええ!」

 

 召喚士が、キラキラを吐き出した。

 キラキラによって、魔方陣が汚れて形を崩していく。

 これでもう、召喚はできなかろう。


 だが、オレの追撃は終わらない。

 さらに詠唱を続けて、コイツから魔力を吐き出させる。

 

「もうやめてくれ。降参だ! もう、なにも出ない」


 青ざめた召喚士が、命乞いをしてきた。


 そんなんで、許されると思っているのか。


「ダーメ❤ 洗いざらい吐き出さなければ、もっとリバースさせちゃうZO」


「う、うえっぷ。ゲロゲロゲロ……」


 胃液しか出なくなっても、オレは容赦なく呪文を詠唱し続けた。


「か、勘弁してください! 全部しゃべりますからぁ」


 うつ伏せになって、犯人は悶絶する。


「ンフフ。始めからおとなしくしておけば、つらい目に会わずに済んだんだZO」


 日常会話をしていたはずなのに、敵は吐きすぎて失神してしまった。

 


 数日後、ギルドから御礼の品を大量にもらう。


「おめえさんたちには、驚かされるぜ。あのデーモンをぶっ倒しちまうとか」


「当然だな。チチェロに不可能はないのさ」



 ひとまず、この地帯は大丈夫だ。街も村も、機能を再生するに違いない。



「それにしても、チチェロが強いな。ウチのヨメが勇者の末裔ってのは、本当なんだろう」


「いや王子……私としては、ジュライ王子のほうがバケモノなんだが?」


「そうか?」


「デーモンを喚び出すほどの魔方陣など、並の術師では破壊できん。それを言葉だけであっさりとぶち壊したんだぞ」


 そうなのか。全然自覚がなかったが。

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