変神

風若シオン

第1話 朝起きたら、そこは天界(おれのへや)だった

ピピピ、ピピピ、ピピピピピ。

…むにゃ…ヒステリックな彼女(めざまし)が俺を起こしてくる。なんだか背中が痒い。目を開くのも億劫なので手探りで目覚ましを止める。目を閉じたまま起きてパジャマを脱ぎ、壁のハンガーラックに手を伸ばす。あ、手を伸ばす角度が少しズレてる、もうちょい右か。シャツを掴んで背中側に掛かってる時計を見る。まだ7時。もうちょいゆっくりするかぁ…。……………は?俺はいつの間に目を開けた?パチリ。目が開く。前には見慣れた勉強机とドア。後ろには壁掛け時計とカーテンの閉じた窓。背中側の景色が視えてる!?驚いて身体を回すと180°視界が前後入れ替わる。背中に目でも付いてんのか!?

鏡を見ようと焦って階段を駆け下りる。洗面台に突っ込んで鏡を見る。ってかさっきから電気を点けてないのに明るいぞ…?なんで…?

そんな疑問も、鏡を見るとすぐに解決した。

鏡を見て、背中を向けて背中でも鏡を見る。

―僕のなぜか寝癖なく整った頭の上には神々しく輝く光の輪っかが浮かび、背中には黄金色の瞳が輝いていた。

 俺は神様にでもなったのだろうか、その光景が信じられないまま、リビングでお茶でも飲もうと湯飲みを棚から出す。お腹すいたな、などと考えていたら湯飲みに耳のない食パンが入っていた。…寝癖がなく、耳のない食パンが虚空から出てくる。なんとも都合がいいが、俗っぽすぎる奇跡を起こしちゃったようだ。

 パンにジャムを塗って食べながら携帯で朝のニュースと天気予報を見る。今日は雨らしいがなぜか僕の家から学校までの道は晴れているらしかった。さっきからまるで俺が神にでもなったかのようなふざけたことが起きまくってるがどうせ夢だろ、学校に着く頃には目も冴えてるべ、と気楽に鞄に荷物を詰めて家を出る。これから始まる波乱の予兆には気付きもせずに―

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