第20話 アナザーエピソード〜ローレンス①〜




はるか昔、我は国の三都と呼ばれる内の一つ

ライファス聖王国の国王の娘として生を受けた


その頃のライファス聖王国は活気に満ち溢れていたのだ。商売達は自らの商品のを売るためにありたあらゆる宣伝や声援を出し、街の中心には子供の遊ぶ音や笑う声が聞こえ、冒険者は今日も今日とて生き残るため、楽しむため、戦うために外に出る。


そんな空気を漂わせ、街は活気に溢れていた。


そんな時に我は生まれたのだ。初めは幸せだった。確かに王の娘ということもあって厳しいところもあったかもしれない。だが、我の家族は優しい人達でいっぱいだった。


不器用な愛と優しさを与えてくれる父

厳しさを持ち合わせているが、それ以上に我を包み込んでくれた母

国の次期王として奮闘し、導いてくれた兄

国王の娘として色々教えてくれた姉

我が辛い時に励ましてくれた妹、弟


そんな存在が我にはいた。

それに日頃の行いなのか、民にも慕われ応援された。


だからこの時の我はほんとに幸せでそして国のために頑張ろうという力をくれたのだ。




だが、悲劇が起こったのは我が魔法に関わり出した時だ。


きっかけはただの興味本位であったのだ

ある日、我はまた色々な知識を学ぶべく王宮にある図書館に行っていたのだ。


部屋に入ると、そこには本を開いて何かを勉強している兄と姉の姿があった。


真面目な兄とお茶らけな姉は波長が合わないのか、いつも喧嘩ばかりしていた。

でも、いまの様子を見てみると普段の喧嘩をしている様子とは違いお互い、真面目に本を読んでいたのだ。

この光景に我は愕然とした。だって日常茶飯事で喧嘩が起きる兄と姉なのだぞ?困惑しないわけがない。だから気になったのだ。二人が今読んでいることについて。


「兄様、姉様今何を読んでいるのですか?」

我は集中しているのであろう二人に申し訳ないとおもいながら声を掛けた。


すると答えてくれたのは姉の方だった。

「おーローセンスじゃん。今おねーちゃんね、魔法の勉強をしているんだよ」


「魔法?何なのですかそれは?」

この時の我はまだ幼かったからか魔法のことについてはまだ知らなかった。


「そっかーまだローレンスはまだ幼いから知らないのねー。可愛い妹だー」


「むっ、我を可愛い妹扱いするのはやめてください姉様!」


「いやーそういうところも可愛いねー。えっとそれで魔法のことなんだっけ?」


姉にからかわれた我は少しむっときたので言い返したが、そこも可愛いと言われてしまう。我この人には一生勝てないと思うのだ。

そんなことを考えていると、姉様が説明をした。


「魔法っていうは簡単に言うと私たちの中にある魔力っていうエネルギーを行使してそれを具現化させることで様々なことができる現象のことよ」


説明をわかりやすくするためか、姉は手のひらを開けるとその上に炎が浮かびあがってきた。このときの我は初めて見た魔法をみて凄くワクワクしたのを覚えている


「こんなふうに私達の中にある魔力を感知してそれを具現化すること初めて魔法は成立するの。それに構築、術式、呪文、色々なことを魔力に付け加えることでその魔法の精度はさらに上がるの」


「はぇぇ〜そんな難しいことを...凄いですね姉様!」

魔法が扱えるということで姉様たちのことを凄く尊敬をしていた。


「ありがと〜今もそこの堅物と私は勉強中よ。こんなやつに負けないようにお姉ちゃん頑張ってるんだよ〜」


「誰が堅物だ」


姉の煽りを聞いていたのか兄が勉強中に喋ってきた。


「あんたみたいな堅物、他に誰がいるのよ?」


「全くこいつは....ローレンス見ていろ。こんな腑抜け俺が直々に叩き潰してやるからな?」


「その言葉そのまま返すわよ真面目バカ」


「「あ゛っ?」」


そんな喧嘩をみていつもは苦笑していた我だが、魔法という自分の知らないものに興味深々だった我には何も見えなかった。


「兄様姉様!我、魔法について学んでみたい!!」

我の発言に二人は喧嘩をやめて、我の方をみて凄く驚いていたのだ。


「しょ、正気か?魔法は我々でも学ぶのに苦労するものだぞ?」


兄が我のことを心配しているような声で我に問いかけてくる。

だが、我は決めたことには止まらない性格をしているのだ。

そんなことで止まらないはずがなく....


「それはやってみないと分からないじゃないですか兄様!我は凄く興味があります!」


我のそんな熱意が伝わったのか、二人は目を合わせ、仕方なそうな顔をして


「分かったわローレンス。私が知っていることを全部教えるわ。おねーちゃんにまかせなさーい」


「おい、勝手に進めるな。ローレンスに魔法を教えるのは俺だ。

ローレンス、魔法のことなら俺に聞け?だらしない姉よりも分かりやすく教えてやるからな?」


「誰がださしない姉よ!?あんたみたいな融通が聞かない馬鹿に教えられてもこの子なは分からないわよ!」


「なんだと!?そっちだって教えると言いながらローレンスと遊ぶ気だろ!全くふざけた奴が近くにいると教育に悪いだろうな」


「「.....」」


黙って睨みながら我に教えるのは私だと言わんばかりの圧を二人とも出している。

いつもならここまできたら止めるのだが、今の我にはそんなことどうでもよくて

結局自分で魔法について学ぶのだった。


だが、ここから少しずつ崩壊していくことになるとは我は微塵にも思わなかった。


最初は二人には全く及ばなかったが、時間が経つにつれ我の魔法の才能は急激に発揮することになる。


魔法は魔素を利用したほうがメリットが多いこと、術式、構築、呪文の最略化

それも学んでいく過程で必要なくなったりと、どんどんと兄や姉を突き放していった。


だがこれだけに飽き足らず、魔法の適性について調べてみたが、それも異常な結果だった。魔法適正装置で調べてみるとその結果は「判別不能」


試しに属性魔法を唱えてみたが、使えない魔法は存在しなかった。

つまり、全属性魔法を使えたのだ。


これは前代未聞のことでそれはいずれ世界にも知れ渡る予定だった。

だが、我が全属性使えることを世に知らされることはなかった。



なぜならその時、我の存在は消されてしまったからだ。


どういうこのなのか、そんなの我にも分からなかった。

だが、我の耳にはこんな噂が広まっていた




ここには得体のしれない化け物がいる、と


はじめはなんのことか分からなかった。

どこに化け物がいるのかも知らなかった。

だが、考えれば考えるほど違和感を覚えた。

我の存在が国に消えた時期と化け物の噂が広がり始めた時期が一致したのだ。



そのとき考えたくない可能性にたどり着いてしまった。




この一連の事件に我の....我の......










......我の家族が関わっていることを


おそらく原因になったのは嫉妬なのだろう

子供のころから一生懸命勉強をしてやっと魔法が使えたのに、ぽっとでの我が才能も、知識も、魔法に関する何もかもすべてにおいて上回ってしまったからだ。


その結果我に対する兄や姉の対応が変わった。

甘々だった対象は嫉妬と憎悪の対象に変わり家族でのいじめを受けるのも不思議ではなくなった


そんなイジメが過激になったのが、我の存在そのものを消すことになったのだろう。

それだけではない。我の身の蓋もない噂を民や家族などに言い回し、その結果我には誰1人味方をしてくれる人は存在せず、民からも家族からも嫌われてしまった



…どうして?どうして我は嫌われたのだ?

我はただ、好きなことについて学びたかっただけなのに、この力で民の力になりたかったのに……


そんな弱い心が隙を生んだんだろう。

我はとある組織に誘拐されてされてしまった


勿論、家族はそんなのどうでも良いと思ってたらしく、逆にあんな奴がいなくなって清々したと家族は前よりも賑やかになったらしい。だから助けてくれるはずがない


我が誘拐された場所は遥か昔に廃墟となっている研究所だ。


どうやら我が全属性魔法を使えるとどこからか噂を聞いたらしく、それで捕まえに行ったらしいのだ。


そこからはまるで地獄の日々だった。


ある時はなんの効果か分からないような薬を飲まされ、数ヶ月頭が痛くなったり、またある時はよく分からない化け物と戦わされて、腕を噛みちぎられたり、じわじわと脚を喰われたりと……何故かは分からないが、全てが終わった時には手足もまるで植物のように生えていたのだ。



本当に我1人なら心はもう壊れていたのだろう。

だが、我にはまだ希望があった。それが——



「ローレンスちゃん大丈夫?凄く痛そうにしていたけど…」


我に話しかけてきた我ぐらいの幼い子供だった。

初めはもう何もかも嫌になって誰にも心は開かないと決めていたのに、何回も何回も話しかけられてる内に心にあった冷たい氷が溶けていった気がしたのだ。

…名前は忘れてしまったが、とても、とても大事な存在なのだ。


「…う、うむ……今日も生き残ったぞ⬛︎⬛︎⬛︎」


「でも…顔色悪いよ?もし辛かったらいつでも言ってね?盟友の私が力になるから」


「…あ、ありがとう……なら少しだけ寝よ……う……か…」


相当疲れていたのか、この時の我はすぐに眠ってしまったのだ。「おやすみ」とそんな声が聞こえた気がして、とてもぐっすり眠れたと思う。



ただこれが最後の会話なら、我は意地でも起きてただろう




我が起きた時に目に入った光景はただただ真っ暗な部屋だった。

その周りには研究所のメンバーらしき人物たちが我を…いや我とその目の前にいる誰かを囲っていた。


「ようやく目覚めましたか」


ゾクリッ!


身体の全神経を逆立てるようなそんな声が聞こえた。

声だけ聞けば、包んでくれるような優しさがあると思われるが、本人を見るとその奥には

深淵と思われる眼があり、我を引き込まんとばかりに向けられていた。


そのリーダーであるであろう者が部下に何かを命令してるのが聞こえてきた。


「さっさと連れてきなさい。ようやく神が舞い降りるのです。この1秒1秒すら無駄だと思いなさい!」


忠実な部下が、リーダー…薄暗くて分からないが、おそらく神官なのだろう。の指示に従い我の目の前にある人物が連れてこまれた。


今回はなにをされるんだ?もう痛いのはいやなのだ。

憂鬱な気持ちのまま、我は神官の横にいる目の前の人物を見た。その人物は………




「ろ、ローレンス、ちゃん………」


「!?何故お主がここに!?それとどうしたのだその傷は!!」


今我の目の前に居たのはかつての盟友だった存在。

そんな存在が傷だらけで今にも死にそうな状態で我の目の前に運ばれてきた。



「しっかりしろ!まだ間に合う……お願いします!我のことは何にでも使っていいからこやつを……こやつを助けてあげてください!」


周りの研究者、目の前にいる神官の部下、そしてリーダーであろう神官に誠心誠意を持って頼み込んだ。我の大切な存在なのだから生きて欲しい。だが、そんな思いは届かず誰もが我らを見守っている。


「……ろ、ろー……れんす……ちゃ、ん」


「もう喋るな!傷が開く!このまま死にたいのか!?……くそっどうしてここには魔法が使えないのだ!?魔法さえ使えれば我が……」


我は混乱していた。自分の大切な存在を失うかもしれない。そう思うと怖くて怖くて仕方なかった。だがら神にでも頼んだ。どうか助けてくれと、もう奪わないでくれと……だが世界は残酷だ


「………い、…生き…て………」

そんな言葉を最後にかつての盟友は抜け殻のように力が抜け、目に光が無くなった。



「………」


瞬間、我の中の記憶が巡り回る。



『ねぇ、もしかして新しい子?初めまして!これからよろしくね!!』


初めてあったあの笑顔も


『見て見てローレンスちゃん!私、光の魔法属性使えるんだ!だからここから出たら大魔法使いになるの!』


いつまでも諦めなかったその夢も




『私とローレンスちゃんは友達の友達、「盟友」だよ!」


……我のことを盟友と言ってくれた、存在も






——全部、消えたのだ



「あ、あぁ…!』


我の中の何かが壊れていく


「おぉ…!ついに神の降臨だ!これでこの世界は救われるんだ!!!」


何も、聞こえない。何も、感じない


ただ我が思ったこトハ…………


















『「ワタシ(ワレ)ヲウラギッタコノセカイヲゼンブウメツクシテヤル」』



その後、我の記憶は一切ない。

ただ一つだけ思い出したことがあるのだ。




「ねぇお母様、混沌ってなに?」


「あら、難しい事を聞くのね?それは……」












………ナニモカモヲメチャクチャニスルコトという意味らしい。





その後、我が意識が戻って最初にみたものは

壊滅したかつての聖王国ライファスの姿だったのだ。



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