第5話 藻人間
廃校のプール
千切れた手
眼の海に広がる
針の花
泳ぎ切った魚は
骨ごと干される
紙が散る歩道までさめざめと
潮風が吹いては
盲の老婆が火を炊く
あつめた枝を冠の形にして
月に投げれば、
小屋の寒さも凌げるだろう
黒死病が流行る街では
るるるるる
という狐の声が先触れだった
韃靼の形に歪められた雪の塊に
杏と柘榴を砂糖漬にし、
白い鳥がついばんだ
あそこの橋まで歩くと
もう地平線は見えなくなりますよ
東の風がそう言った
砂丘を越えると、
血のような果汁をごくごく飲めると
砂歩きが言った
太陽に頭が焼かれちまったんだと
腐った脳で考えたが、
斧で叩き切ったから
雁がくるくると舞う
匂いがしないみたいな塩水を
煮詰めて作る
藻を全身にまとった藻人間が
傴僂と戦う映画で
またもや
るるるるる
と泣く
無題 詩 @ogaprofane77
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。無題 詩の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます