第5話 藻人間

廃校のプール

千切れた手

眼の海に広がる

針の花

泳ぎ切った魚は

骨ごと干される

紙が散る歩道までさめざめと

潮風が吹いては

盲の老婆が火を炊く

あつめた枝を冠の形にして

月に投げれば、

小屋の寒さも凌げるだろう

黒死病が流行る街では

るるるるる

という狐の声が先触れだった

韃靼の形に歪められた雪の塊に

杏と柘榴を砂糖漬にし、

白い鳥がついばんだ

あそこの橋まで歩くと

もう地平線は見えなくなりますよ

東の風がそう言った

砂丘を越えると、

血のような果汁をごくごく飲めると

砂歩きが言った

太陽に頭が焼かれちまったんだと

腐った脳で考えたが、

斧で叩き切ったから

雁がくるくると舞う

匂いがしないみたいな塩水を

煮詰めて作る

藻を全身にまとった藻人間が

傴僂と戦う映画で

またもや

るるるるる

と泣く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る