第15話 

「ん...ありがと、りんごいる?」

アーニャはミイラ状態の副隊長にうさぎカットのりんごの乗った皿を差し出すが

「この状態で食べられるとでも?」

と副隊長に言われ

「....残念」

シュンとちょっと落ち込んだ表情を見せる

「さて、スオミ小隊の皆の無事がわかった事だし、支部の隊長達にも会いに行くとしよう」

「へーい」

「ヴィッカース隊長の病室はどこだったかな?」


「3号室だったはずですが、まだ留まっているでしょうか...」

病室にいた治療師にヴィッカースの行方を聞くと

「ヴィッカースさんでしたら先ほど街に行くって言って出て行きましたよ」

そう言って治療師はグチャグチャになったシーツを変えベットメイキングを行っていた。

「そうか、他の人達もヴィッカースについていったのかな?」

病室には10人分の患者用の衣服と血のついた包帯が放置されていて

そのほかにも食べ終わり机に放置されている食器があったが、女性の治療師によって

キレイに片付けられていった。

「はい、街の復興作業を手伝うと言ってヴィッカースさんと一緒に街へ行ってしまわれました」


「そうか....」



「お止めした方がよろしかったでしょうか...」


「いやいや、あの街の惨状を見たら船員の皆も復興支援に手伝いに行ってしまったし、支部のヴィッカースさん達はこの町で育った人々ですから何か思うことがあるだろうからね。」

黒手組では珍しい完全な現地人のヴィッカース隊長はこの街で育ち、20歳で黒手組に入り、黒手組での地位を上げて生まれ育った街に支部を設置した。それは今回の防衛戦に役立ち、多くの市民の命を救った事だろう。

「そうですね...」

「どうする黒崎、街へ行ってみるか?」

荒木は黒崎に街の視察を提案する。

「そうだね、僕達も街へ行ってみるとしようか、復興班はもう作業を開始しているんだったね。」

黒崎は荒木に復興状況はどうかと尋ねる。

「そう聞いてる、あと周辺の各支部からの支援物資も到着している頃だろうから物資と人員を街に入れるなら街の代表に会って今後の方針を伝えた方がいいんじゃないか?」


「そうか...では僕とアーニャは街の代表と会談、荒木達は街の瓦礫撤去、料理長は支援物資を使って炊き出しを行なってくれ。場所は中央広場だ、あそこは被害が少ないからね、市民の皆は防衛戦で疲れている、それにお腹が空いているはずだからね。」


「了解、予定通り中央門から復興作業を順次始める。


「ん...了解」


「わかったぜ黒崎船長、市民の腹を満たしてやるぜ」


「頼もしいね」


「では、仕事に取り掛かろうか....」



「解散!」

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