第7話

「遅いぞ!黒崎船長!今日は念願のカレーだぜ!早くしないと無くなっちまうよ!」

黒いエプロンを付け、黒いコック帽を被った黒髪の中年男性

ツェッペリン1番船の料理長 中田翔吉はいつもより遅く現れた黒崎の背中を笑顔でバシバシ叩く。これには黒崎も苦笑いを隠せなかった。

「ありがとう、香辛料とかの材料費高かったんじゃないかい?」

ツェッペリン飛行船の食堂では一食当たりの材料費が決まっており、一食大銅貨8枚から銀貨一枚とされている。

日本円にすると銅貨一枚十円、大銅貨一枚百円、銀貨一枚千円くらいだそうだ

ただ毎日異なる料理が出せるという訳ではない。

その理由は飛行船である以上水が貴重ということで水を多く使ったスープ系の料理が出せない為に水分を多く含んだ食材や長持ちする芋系の食材を使った変わり映えのしない料理が多いので殆どの船員は新しい料理を日々求めている。

つまりカレーは転移者船員達にとって救世主となる料理だった。



「そこら辺は大丈夫だぜ!何たって農作系の転移者に大量生産してもらってるからな!安く済んでよかった」「あ、食べながらでいいぜ」と翔吉は言い、黒崎の向かい側の席に座る。

丁度

「ほう、農作系か...名前はなんて言っていた?」

黒崎の知り合いには農作系のスキルを持った転移者も多いが殆どが各国家で農民をしている為にそこまで多くの食材を流せないことを知っていた。

そして新たに農作系転移者・転生者が現れた時には※※を使って接触を図っていた。

「確か、佐々木って言っていたかな。」

「佐々木...ネセト公国のアイツか、随分と懐かしい名が出た物だね。」

ネセト公国、国土の周辺にあるザルツブルグ渓谷に囲まれた城塞型の農業国家

国士の殆どは農地で主に小麦などを生産している。

比較的温厚な中立国で有名で、何百年か前に他国の侵略を受けながらも騎士団の活躍で逆侵攻し領土を奪い取った歴史を持つ。怒らせるとヤバいタイプの国

そんな恐ろしい国の人と知り合いだったとは思わなかった船員達は顔を真っ青にして食べる手を止めているものも居る

「知り合いだったんですかい?」

そう翔吉は聞くと所々ぼかしながら黒崎は語り出す。

「まあね、あの国の農作物は高品質な物が多い、それにあそこの王族とも知り合いだから、優遇してもらってるよ。」


「へぇ、王族ってことは黒崎船長が前にいたって言うオーランド王国関係って事ですかい」

つまりオーランド王国にその王族が外交に訪れたときに知り合ったと言う事なのだろうと


「そんな所だね。」


「あ!料理長!昨日ぶりですね!」


「おぉ、三崎か、相変わらず元気だなぁ」


つづく

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