第6話前副船長の話

「飛行船の建造にかんしては荒木さんの前任の副船長が建造指揮を取っていたと言っていましたが、どんな方なんですか?」

三崎は黒崎の発言から気になったことを聞いてみた

それは前副船長とはどんな人なのかと

「一言で言うなら...天才かな。」

黒崎はそう言いアルバムの中にあった一枚の写真を取り出した。

そこには黒崎と前副船長、沙霧葵が写っていて写真の背景には大きな飛行船、ツェッペリンが写っていた。右に黒崎、左に沙霧といった具合で

「天才...」

前副船長兼開発・建造主任、沙霧葵

性別 男 年齢不明 

沙霧は所謂、天才という人種だった。

一を見て、百を理解する程に彼は優れていた。

「その沙霧さんは今どこに...」


「死んだよ」



「え...」




「初期型ツェッペリン飛行試験の際に飛行型魔物の襲撃スタンピードにあってね。」

襲撃スタンピードとは、魔物の大量発生による大規模戦闘のことであり

起きれば大災害なりえる程危険極まりない物であった。


「そんな....」

同じ転移者として悲しみを隠せない三崎

それを見かねて、黒崎は

「君はもう戻りなさい...そろそろ飯時だから皆が起きてくるだろう。」

と意識を他に向ける様に仕向ける

ご飯大好きな三崎はすぐに立ち直り、ルンルン気分で踊り出す

「はい!」

「今日の料理は何だったかな」

黒崎が今日の食事は何かと聞くと驚きの回答が返ってきた。

「料理長曰くこの世界では貴重な香辛料をふんだんに使用したカレーだそうです!」


「ほう。カレーか...」

香辛料は地球ではそこまで高価ではなかったがこの世界では貴重であるため、王族や貴族以外は高すぎて手を出せないだろう。

例に挙げるなら ローマ時代の『プリニウスの博物誌』にある記述ではナガコショウは1ポンドが15デナリウス、白コショウは7デナリウス、黒コショウは4デナリウスで売られている。コショウの使用がこんなに流行するようになったのは異常である。ある品物についてはその甘い味がひとつの魅力であり、他のものについてはその外観がそうであるのに、コショウはその実にも漿果にも取柄がないのだから。それのよろこばしいただひとつの性質といえばそれがぴりっとすることであり、それを入手しようとしてわれわれははるばるインドまででかけて行くのだ。・・・それらの国々では野生している。それなのにそれらは金や銀のように目方で買われているのだ。

1~2世紀ローマ帝国のデナリウス銀貨の大きさは18.2mm 3.3g

また紀元77年のローマ帝国では、

   黒胡椒 1ポンドあたり4デナリウス

   白胡椒 1ポンドあたり7デナリウス

   長胡椒 1ポンドあたり15デナリウス

だったと書かれている。 1ポンドは320g、1デナリウスは84分の1ポンドの銀貨、金はこの12.5倍の価値で

   金1g=黒胡椒262g、白胡椒150g、長胡椒70g

   銀1g=黒胡椒21g、白胡椒12g、長胡椒5.6g

となる。

「高価な香辛料がこの世界で大量に用意できるとは...」

さすがは料理長だとつぶやく黒崎



「早く行きましょう!黒崎船長!」

三崎は早く食べたいのか、手をブンブン振りながら急かしてくる

「そうだね...久しぶりのカレー食べないわけには行かないよな」


つづく




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