第69話 処世術を披露する鳥羽
しかしわしやったら‘いつか見とってみい、ひっくり返したる、天下を取ったる’てな具合に飛躍への発条(ばね)としますがな。堪え忍び、しかるのち撃って出る、ですわ。ははは。あ、いかん、ここはわしやのうて梅子さんやった。堪忍、堪忍」と思わず自分の処世術を披露したあとで僧の話をつなぐように「うーむ、なるほど。とにかくこの世の中が我慢ならん、本音と建前に逃げる世間は気に食わんというわけやな。それはまあわかるが(≒青くさいと思うが)、そやけどなんでそれがク、クワンティエン?やったか、さっきの話に結びつくんやろ。うん、まあ、そこや…それで?」とばかり梅子に顔を向ける。鳥羽のちょっかいにたたらを踏まされた梅子だったがめずらしく癇を高ぶらせずにウン、ウンとばかりに二度ほどうなずいてから「そうねえ、それこそ真なくば立たずだわさ。しんの字は信ずるの信じゃなくて真実の真だけど、そこが会長さん、あんたと私の違いよ。そしてそれは雲水さん、それがさきほどのあんたへの意趣返しでもあるのよ。真実と正義がすべてを律しなければいったい何がすべての指針になると云うの?やられたらやり返す、いつか必ずという出世へのバネとするというのもいいけどさ、しかしそれじゃ世の中無茶苦茶になっちゃうじゃん。忍土はいつか仏国土にせんがための忍土でしょ?いつかは真をあらわすための。いつまでも忍ぶばかりで、自分の中で消化するばかりだったら結局はポシャってしまう。絶望してしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます