第63話 サルの倫理が通用している!
対する北ベトナムにしたって戦後の、あのザマはいったい何よ。みずからが奉じた共産主義もアメリカへの遺恨もみんな綺麗に投げ打って、経済指向の欲望社会と化し、アメリカの資本や企業にアイ・ラブ・ユーでは死んで行った兵士たちが浮かばれないわ。そしてそれは日本も同じよ。自分のような女性まで戦争に狩り出させる、その社会のもろもろの、すべてが嫌だったの。NO!を云ったのよ」とまで一気に云って一息入れようとしたが「おサルさんが示した愛情に心引かれたんだと思いますけどね」と亜希子が小声で云うと火に油をそそぐ結果となってしまった。梅子に休みはなしだ。「そ、その愛情がくせものなのよ。じゃ、じゃあその愛情を受け入れておサルさんにやらせるのかさあ。異目異科での性交など許されない。倫理にもとるし科学的にもマッドだ。しかしそのタブーのようなことが世間一般では通用していると云っているのよ。近親相姦でも一夫多妻でもなんでもありで、それが権力者や覇者ならばすべてが許される、咎められることはないの。サルの愛情はだからそういった矛盾も含んでいるのよ。それが自分を斯く死に至らしめた、すればそれを決して受け入れるわけがないじゃないの!」
「そうでっか?しかし近親相姦や獣姦が世間で認められ、通用してますかいな」苦笑しながら鳥羽が異を唱える。『無茶苦茶云うとる』とばかり梅子を買い被ったことを自嘲している観がある。しかし「ふむ、おもしろい。しかしそれ(サルの愛情)が純愛だったという気もしますが…とにかく、ひと息お入れなさい、梅子さん」と僧が休息をすすめる。しかし荒ぶる神はおさまらない。
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