第48話 金縛りが解けた鳥羽
供養と称しながらその実みずからの身体への自負心こそがそこにはあった、身体への五官をともなって、です。そしてそれが顕現してしまったわけです。まあもっとも、そばで見ている男がいたとしたらまたとない見ものでしょうが…」娘たちがいっせいに笑う「えへん、まあともかく、さて梅子さん、さきほどの〝純蜜うんぬん〟のことですが、ここいらで私がそう申し上げた趣旨をわかっていただけたでしょうか?」といきなり梅子へと質問をぶつけた。一瞬気圧されながらも「さあね。うっすらとだけど、わかりかけたかな。でも今はまだ遠慮しとくわ」と梅子はかわし更に「感だけどまだ話の先があるんじゃない?肝心なところはまだこれからなんでしょう?」と先をうながす。「うむ、さすが…」と再び僧が話を続けようとしたとき亜希子が鳥羽の放心状態を心配して「鳥羽さん、いかがですか?お茶を召し上がりません?これ、ジャスミン茶ですよ」と云いながら空になっていた鳥羽のポットの蓋に自分のポットから茶を注いだ。語りかけられた鳥羽は夢からさめたように亜希子の顔を見、「…ああ、すんまへん。おおきに」とぼそっと云ってはうまそうに茶を飲みほした。そして気まりわるげに「えっへん…まあ、しゃあない。あんたらが認めるんやったら…」などとうそぶいてはしかし恐れ入り気に僧を見あげる。僧はにこやかにそれにうなずいて見せ、いよいよ話の佳境へと入って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます