第26話 仏縁どころか魔縁、逆縁?
しかしなおも梅子が「本当に仏縁でしょうかね。もしかしたら魔縁、逆縁やも知れませんよ」と要らぬことを一言云う。どこかしらそう云わざるを得ないような観があった。「梅子」と亜希子がたしなめ「すみません、お話の腰を折ってしまって…どうぞ、続けてください」と話の先を乞う。皆と同様に話に引き込まれているようだった。
「(梅子に)いや、ハハハ、ひょっとしたらそうやも知れまへん。だったらひとつ堪忍してやってください。しかしとにかくお嬢様がたのそばに来てみたら、私には何かこう、どう云ったらええんやろ、なつかしいような…ちょうど長年ほったらかしにしとった家族に会(お)うたような…そんな気がしましたんねん。なぜですやろ?」と亜希子に向いてわざとらしく訊くのに「わかりません」と左手で口を覆い、右手を顔の前でふってその亜希子が苦笑する。無論まじめに訊いたわけではないだろうが敢て亜希子に尋ねたいという風情が鳥羽にはあった。しかしいかにもつかみどころのない話で、元よりそれを自覚している鳥羽は「いや、ハハハ、まったく。無茶苦茶なことを云うてもうて。若い娘(いと)はんらの前で。ほんまにしょうもない爺さんや。すんまへん。私、先ほども云いましたが鳥羽と申します。出版の会社に勤めてましたが今は定年退職して、楽隠居させてもろうてます。ひとつ、御縁いただけるようでしたら、よろしゅうお頼申しあげます」と長口上を終えた…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます