クワンティエンの夢

多谷昇太

吉野の桜

第1話 蛇

詩・「蛇」(⇄〝へみ〟⇄〝かみ・蛇身・神〟)


闇に動くものあり。

地を這いて音もなく、滑り行き滑り来る。その云う様(よう)…。


な忘れそわれ神々しきもの。地を這うごとく汝が身の触れば、また異性と交わるに、

その触ればう悦び、汝が身の覚ゆればなり。

我こそは蛇身(かみ)にして神なりき。いにしえ地に君臨せしもの。

外(と)つ国に優りて我をあがめしは、日の本のそなたらにて違わず。

いま奇しき光を見、新しき世に向かうとて、

我を疎遠にすとは何事か。

我を経し来ざればそれ得べからざりしものを…

毛離(けが・穢)れて、身削ぎ(禊)をするなら、

我をも具しなむや、子ら。


本源のやすらぎに帰るような日々の睡眠に、人は夜ごと落ちるのだけれど、そして目覚めては身心を回復し、東雲(しののめ)を迎えるのだけれど、その直前、何かの隙をついて身心に入り来るものがある。目覚める直前の肉体に、分けてもその五官、触覚に、離れていた幽体が戻る時、いにしえからのものはそこに生じる隙を見逃さない。地面ならぬ人の身体にそれは這い来たり、触覚の喜びをともなって、すなわち我らが身にまとわりつく…。

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