誘拐3
リリーとローズがいる地下牢に先程の男がまたやって来た。その男はリリーを無理矢理立たせ、どこかに連れて行こうとしている。
「ちょっと‼︎ お姉様をどこに連れて行く気⁉︎」
「フン、お前に言う義理はねえな」
そう言って、その男はリリーを連れてどこかに行ってしまった。ローズは縛られていたこともあり、動くことが出来なかった。
ローズは自分が結局何も出来なかったことが悔しくて堪らなかった。こんな状況だけに仕方の無いことなのだが…。
そんなことを考えていたその時だった。
バンッという大きな音が鳴り、扉が開いた。正確には蹴破られたのだが。
「っ貴方は…」
「助けに来たぞ‼︎」
ジェラルドが助けに来たのだ。
「……」
「大丈夫か⁉︎ あれっ、リリーはどこだ⁉︎」
「…知らない男が連れてったわ」
「何⁉︎ すぐに探さなければ‼︎」
そう言ってジェラルドは騎士に指示を出す。
「その腕、怪我をしているじゃないか‼︎」
縄できつく縛られたせいで腕が赤くなっていた。
「…このぐらい平気よ。とっととお姉様のところに行きなさいよ」
「ローズ?」
普段の元気がないローズが気にかかったのかジェラルドが立ち止まる。
「私は結局何も出来なかった…。昔からお姉様に助けられてばかりで…」
「それだけリリーはローズのことが大切だってことだろ」
「っそんなこと…」
「だってそうだろ。そうじゃなきゃ助けたりしないだろ。俺にも弟がいるし気持ちはよく分かる」
「そうだとして、なんで貴方は私を気遣うのよ‼︎」
「そりゃ大切だからに決まってるだろ」
「はあ⁉︎ 何言って‼︎ 私はいつも貴方の邪魔をしたのよ⁉︎」
「そんなこと全く気にしてないな。確かに邪魔はされたが、俺はローズとも仲良くなりたかったからな。リリーの大切な義妹だし、俺がリリーと無事結婚出来たら俺の義妹にもなるんだからな」
そう言って、ジェラルドは優しい眼差しを向けている。
「っもう行きなさいよ‼︎」
そう言って無理矢理背中を押されて地下牢から出た。ジェラルドはローズのことをその場にいた数人の騎士に任せて去って行った。
「ていうか、王子様だったの?」
ローズはその場にいた騎士が殿下と呼んでいたことでようやく気が付いた。
そういえば、お父様にはくれぐれも失礼のないようにとか言われてたっけ。どこかの上級貴族だとしか思っていなかったわ。もしかして、いやもしかしなくても結構まずいことしたんじゃ。今更そう思ったローズだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます