第6話 マリとレミ

――――――『マリ、マリ、聞こえる?』


『聞こえる。久しぶり。』


真里亜の頭の中に麗美の声が響く。


『ちょっと真里亜まりに相談があって。』

『なに?あいつのこと?』

『そう。聞かないんだよね。』

『あんたの子だからね。あたしの子でもあるし。人の話なんて聞かない。あいつこそ耳聞こえないんじゃないかってたまに思う。ていうか耳そのものが無い。』

『ごめんね。育て方悪くて。』

『ほとんどあんた育ててないでしょ。』

『まぁね。ほぼほぼあんただわ。』


2人は笑いながら話していた。


『…マリ。』

『うん?』

『どうする?』

『ねー。』

『本当に困る。』

『私だってそう。』

『さっさと若い子見つけてくれれば楽なのに。』

『あいつも変わり者だからさ、年増好きだし。テレビ見てても大体あたし達位の人見てにまにましてるから。』

『マジで?…どうにもなんない』


この2人元々ギャルで耳が聞こえない以外は普通の女子二人で、しかも結構遊んでた。

だから2人になると自然と素で話す。そしてたまに怖い。筋の通ったギャル。だからキレさせると手が付けられない。昔写真を見せてもらったことがあるが、ギャルと言うより、ヤンキーに近かった。


でもそんな似た2人だからこそ僕は惹かれていた。


『麗美。』

『うん?』

『いいこと思いついた。』

『なに?』

『非現実すぎるし、無理かもしれない。でも発想としてはいけるかも。』

『?』


『見た目はあいつの好みで年下。賢いけど危なっかしくて守りたくなるような子。でもあたしらの若い時みたいな感じの子でそれを今風にした感じ。……こんな感じ?いや、やりすぎか。居ない。居ない。』


真里亜が手元の紙にサッと書くと、


『それ可愛い。少女漫画とかに出てきそう。』

『いけるかな。』

『好きそうだよねー。…ていうか相変わらず絵うまいよね。』

『これくらいしか取り柄ないから』

『それは無い。無い。あたしより綺麗だし大人だしさ、子供育てるのうまいしさ。負けてばっか。』

『子供育てるのにうまいも下手もないよ。翔がいい子だっただけ。ちょっとおっとりしてて、優しい子だからね。』

『可愛いよね。』

『可愛い。いくつになってもね。お嫁さんなんて作って欲しくない。』

『本当にね…。私もそう。…でもさ、真里亜はどうなの?稜太の事。』

『可愛いよ。本当に。翔と一緒。けどね…超えちゃいけないラインがあるじゃん。』

『…してないってこと?』

『そう。麗美とこんな話するのもちょっと違うけど、あいつは脱がすけど、あたしは脱がない。』

『あぁ…。』

『思い当たる節なんかあんの?それ引いてるとかじゃないよね?』

『う、うん。』

『…したんだ。』

『したって言うか、一方的にしてくれた。この…服から出てるところだけ。』

『あぁ…そういう感じね。』


『…うん。でも何気に結構よかった。いや、その、あたし、旦那からそういうことなかったし、今までのやつらもそんなやついなかったし…』

『あいつ、優しいからね。』

『…妬いてる?』

『ない。…ないけど、』

『けど?』

『やっぱ無理かも。あいつにあたし以外はちょっときついかも。』

『なんで?』

『あいつさ、甘えたいやつじゃん。しかも全力で。それと上手く伝えられないけどあいつ、確かめてるんだよね。その…愛情のかけられ具合みたいなの。だからあいつのそういうどれくらい愛してくれてるかとかそういうのを明確に言葉じゃなくて行動で的確に伝えられる人じゃないと無理だと思う。あたしはそれをしてあげられるけど、それを他の女ができるかって言ったら…。…麗美できる?』


『あたしは無理だよ?』

『うん。』

『…あっもしかして。』

『…ん?』

『今回のこれもあいつ、まさかだけど、』

『それとは違うと思うな。本当に向かう先が分からなくなってやったんだと思う。』

『だからと言ってなぁ…真里亜はなぁ…』

『でも私しか無理かもなぁとも思うよ。』

『まぁね…』



―――――――――「ママ!ママ!稜太がママ呼んでるよ!」


『ごめんね。手のかかる子で。』

『大丈夫。いつもの事。行ってくるわ。』

『私もそばで見てるから。』

『そうしてあげて。』

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