第3話 八方塞がり

僕は小さい頃から真里亜の膝の上で寝るのが好きだった。翔が寝た後に抱かれて寝るのが好きだった。

それは大きくなっても変わらなくて、

時間がある時は真里亜の膝の上に頭を乗せていた。


その中で暖かい夢を見ていた。

だいたい同じ夢。


――――――――――――。


『稜太。』

『ママ…。』

『おいで。』


僕は白くて暖かい空間でママに抱かれる。

真里亜の傍でしかこの夢は見ない。


真里亜と母はどこかで同居している。

亡くなった今も真里亜の中に棲んでいる。


だからたまにママに聞く。


『ママ、真里亜と結婚していい?』

『うーん、ママは悲しいかな。』

『どうして?』

『真里亜は友達だしそれ以上だけど、あなたにとって本当に幸せかどうかはわからない。』

『…耳?』

『うん…。』


『ママだってそうじゃん。でも親父と結婚したし俺も出来た。』

『率直に言うと、あんたと真里亜の間に子供が出来るのも複雑。母親との間に作ってるのと変わらない。』


『……』

『他の子探しなさい。』


ママは僕を強く強く抱き締めた。


『…ママ』

『うん?』

『生まれ変わったらママがいい。』

『え?』

『生まれ変わったら俺と結婚して。』

『そうね…考えとく。』


『…キスしていい?』


そう聞くと母から僕に口付けてくれた。


『……』

僕は込み上げてくる思いが溢れそうになって 母を抱き寄せた。


『ママなんでしょ?本当は。』

『苦しい…胸が痛い…』

『稜太、真里亜をあたしの代わりにしないで。それがわかってるから嫌なの。あんたが本当に求めてるのはわたし。』


『……じゃあして?空っぽになるまでして?俺、真里亜と最後までしてない。知ってるよね?』

『知ってる。』


―――――――――皮肉にもそこで母は消えた。


僕だけそこに取り残された。

すると白闇の中から黒いコートを来た人が近付いてきた。ヒールが床に当たる音がする…。


もう頭の回路がおかしくなっていた。

僕はその気配と足音で爆発寸前になっていた。

もうあと一歩なにか刺激があれば落雷に打たれそうになっていた。


……そうこう考えてるうちに目の前にその人が来て僕の前にしゃがんだ。


そして僕の頭を撫でて、『あんたも辛いね』と言って僕にキスした。


「!!……」


僕はその人のコートを掴んで震えた。

そして、何故か大粒の涙を流していた。


『消えたい…消えたい……もう嫌だよ…』


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