真里亜

海星

我慢

第1話 2人とも私の子

「まりあー」

「どうしたの?」

「きりんさん。きりんさん。」

「そうだね。きりんさんだね。」


2歳の僕は真里亜に本を持ってきて何かを伝えようとしていた。


母親が2歳でなくなって以来、母方の祖父母に育てられていて、よく真里亜とも会っていた。


不思議なことに僕が初めて明確に発した言葉は、『ママ』でも『パパ』でもない。


『まりや。』母親よりも真里亜が好きだった。

真里亜と遊ぶ時はいくつになっても真里亜にべったりだった。かけるが生まれてからも母と真里亜はよく遊んで、お互い耳が聞こえないということもあって助け合って生きていた。


でも翔が生まれて少しした頃、母は自死した。

しばらくの間僕は誰にも寄り付かなかった。

でも唯一、真里亜にだけは心を開いていて、ずっと真里亜にくっついて、真里亜の姿が見えなくなると、追いかけて探して泣いていた。



耳は聞こえなくても気配はするので僕の姿を見つけると翔の相手をしながら僕も一緒に寝かしつけていた。


赤ちゃんも可愛いけど僕は真里亜を取られたくないとも思っていた。

けど、真里亜はそんな僕の気持ちに寄り添っていつも、


『翔と稜太は私の子。2人とも可愛いよ』と言ってくれていた。


僕には父が居たが母の両親が引き取った。

翔は、最初から父親がいない。真里亜が、1人で育てると押し切ったから。

今も昔も曲げない、聞かない女。でもそんな真里亜が昔も今も大好きだ。

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