ローリフ
SWolf
光の音
陰鬱な秋の日、雨の帳が街を覆い、そびえ立つ高層ビルの輪郭をぼやけさせ、賑やかな通りは、鳴り響くクラクションとタイヤが水を跳ね上げる音の不協和音へと姿を変えた。雨の絶え間ないリズムは、街そのものの鼓動を反映しているかのようだったが、父と息子にとって、それは二人を包み込む重苦しい沈黙の背景音に過ぎなかった。彼らは慣れ親しんだ都会の混沌を後にして、今は未知への旅の途上にあった。それは、彼らを苦しめる影から逃れるための探求だった。
中年の男は、口にできない悲しみの皺が刻まれた顔で、車のハンドルを固く握りしめていた。車は人気のない森の道を曲がりくねって進んでいく。豆だらけの、しかし安定したその手は、寡黙な仮面の下で渦巻く内面の葛藤を裏切っていた。彼の隣では、息子のジャックが物思いに沈んだまま、窓ガラスを伝う雨粒をじっと見つめていた。まだ十九歳になったばかりのジャックの若々しい顔立ちは不自然なほどの無表情に覆われ、その思考は混乱と静かな不安の中で渦巻いていた。
道は果てしなく続いていた。アスファルトのリボンが、霧深い森の抱擁の中へと消えていく。そびえ立つ樫の木々が道に沿って並び、その節くれだった枝が天蓋を形成し、雨を含んだ薄暗い光を濾過していた。父親の視線は遠くを彷徨い、彼らをここに導いた選択の数々に心が奪われているようだった。ジャックは時折、父を盗み見たが、その心は口にする勇気のない疑問で重かった。
永遠とも思える時間が過ぎ、ついに木々が途切れ、人里離れた開けた場所が現れた。家は、忘れ去られた時の番人のようにそこに佇んでいた。かつては誇らしげだったであろうその外観は、今や長年の放置によって無残な姿を晒している。雨さえも、その陰鬱な存在感を認めるかのように、建物に落ちるのをためらっているかのようだった。風化した壁には苔が頑固に張り付き、ひび割れて煤けた窓が、疲れ果てた目のように外を見つめていた。
車が停止し、エンジンのハミングが森のアンビエントな静寂に溶けていった。父親は深いため息をつき、その息でフロントガラスが曇った。ジャックに向き直り、彼は感情がこもった声で言った。
「ここだ、ジャック」その言葉には、希望と諦念の両方が重く響いていた。「俺たちの、新しい家だ」
ジャックは黙ったまま、表情を読み取らせなかった。彼は無愛想に頷くと、抑揚のない動きで車から降りた。湿った空気がすぐに彼を包み込み、雨に濡れた葉の土の匂いと、微かなかび臭さを運んできた。彼は家を見渡した。その威圧的な存在感が、言葉にされない挑戦のように彼にのしかかってくる。ひどい荒廃状態にもかかわらず、その家には何か惹きつけられるものがあった。忘れられた物語の約束を囁いているかのような、不思議な空気が漂っていた。
彼らは機械的に動き、車から箱を降ろして家の中へと運び入れた。内部は外部と同じくらい荒涼としており、そこは見捨てられた記憶の霊廟だった。埃があらゆる表面を覆い、煤けた窓から差し込む薄暗い光の中で、その細かな粒子が渦を巻いていた。家具は白いシーツに覆われ、幽霊のようなその姿は、遠い昔の通夜の参列者を思わせた。空気は湿気で重く、一呼吸ごとにカビの匂いがした。
父親はありふれた作業に没頭した。その動きは意図的で、まるで行動だけがこの重圧的な沈黙を紛らわせられるとでも言うかのようだった。彼は古い鉄のストーブに、なだめるようにして火を熾そうと試みた。薪を並べるその手は、わずかに震えていた。一方、ジャックは気が進まないながらも好奇心に駆られ、家の中を探索していた。軋む床板の一枚一枚、剥がれかけた壁紙の一片一片が、忘れ去られることを拒む歴史を囁いているかのようだった。家は時の重みを背負い、その壁は秘密を吸い込んで飽和していた。
夜の帳が下りると、外の嵐はさらに激しさを増し、嘆くような風のうなり声が、ストーブで火が爆ぜる音と対照をなしていた。父と息子は質素な食事を共にしたが、二人の会話はぎこちなく、途切れ途切れだった。父親は、無理に明るさを装った strained な声で、二人が共有する孤独に軽妙さを持ち込もうとした。
「今はまだ、こんなだが」彼は周囲を指差しながら認めた。「少し手を加えれば、特別な場所にできるさ。やり直すための場所だ」
ジャックは頷いたが、その視線は皿に固定されたままだった。「ああ、そうだね、父さん」彼の声には確信がこもっていなかった。
食事が終わると、父親は差し迫った自身の出発について、切り出しにくい話題に触れた。「明日、仕事で街に戻らないといけない」彼はためらいがちに言った。「お前を一人でここに残していくのは気が引けるが、数日のことだ」
父親が言い終わる前にジャックが遮った。「大丈夫だ」その声は落ち着いていた。「一人でやれる。俺のことは心配しなくていい」
父親は、誇らしさと悲しみが入り混じった目で彼を見つめた。彼はジャックの肩に手を置き、優しく握りしめてから、再び沈黙に身を引いた。二人はそれぞれの部屋に引き上げ、その日の出来事の重みが彼らを浅い眠りへと誘った。
朝になり、嵐は一時的に小康状態となったが、父親の出発はジャックに拠り所を失ったような感覚を残した。時間は長く引き伸ばされ、家の静寂が彼の孤独感を増幅させた。彼は小さな雑事に没頭し、周囲の森を探索したり、家を少しでも住みやすくしようと試みたりした。しかし、どれだけ体を動かしても、意識の片隅に巣食う、じりじりとした不安を追い払うことはできなかった。
夕方までに、嵐は再び猛威を振るい始めた。風は木々の間を唸り声を上げて吹き抜け、その嘆きの歌は、遠雷の深い響きによって時折途切れさせられた。ジャックが物思いに沈んでいると、突然ガラスの割れる音にはっとさせられた。心臓が激しく鼓動する中、彼は二階へ駆け上がった。そこでは窓が一つ、強風で吹き開け、窓ガラスがその力で割れていた。彼がそれを閉めようと手を伸ばした時、外の何かが彼の目を引いた。
雨と揺れる枝の向こうで、奇妙な光が脈動していた。そのこの世のものとは思えない輝きは、ジャックがこれまでに見たどんなものとも違っていた。彼は息を呑み、もっとよく見ようと目を凝らし、ガラスの汚れと結露を拭った。その光は、嵐の猛威を切り裂く超自然的な輝きで、まるで手招きしているかのようだった。
無視できない好奇心に突き動かされ、ジャックはコートを羽織って外へ出た。嵐は容赦ない激しさで彼を迎え撃ち、風は爪を立てるように彼に襲いかかった。彼は光の源へと重い足取りで進んだ。一歩一歩が、荒れ狂う自然との戦いのように感じられた。雨は彼の顔に叩きつけ、骨の髄までずぶ濡れにした。
森は生きているかのようだった。揺れる枝やざわめく葉が、彼の行く手を阻もうと結託しているかのようだった。それでもジャックは、畏怖と決意の入り混じった感情に突き動かされ、先を急いだ。光は近づくにつれて明るさを増し、その輝きが影を切り裂いて森の地面を照らし出した。ついに彼は光が放たれている場所にたどり着き、その源を探そうと密生した葉をかき分けた。
驚いたことに、そこには何もなかった。装置も、火も、光の存在を説明できるような物体も一切なかった。混乱と失望が入り混じった感情で、彼は葉の間にしゃがみ込み、湿った土を指で払った。
突如、目を眩ませるほどの稲妻が走り、続いて耳をつんざくような雷鳴が轟いた。ジャックの心臓が跳ね上がった。目の前の巨大な樫の木が裂け、倒れ始めるのが見えた。大木の幹は、恐ろしい速さで彼に向かって突進してきた。
時間きの流れが緩やかになったように感じられた。ジャックは、これから起ころうとしていることの避けられない運命を悟った。パニックが全身を駆け巡ったが、彼の体は動くことを拒否した。彼は目を閉じ、身構えた。倒れ来る大木の轟音が耳を満たした。その最後の瞬間、彼は震える息を一つ、吐き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます