第57話 ハネムーン 1日目の夜


「凄いね……こんなに近いんだ」


本当に近いよな、表参道から電車で1時間半。


新幹線をかませばそんな時間で熱海についてしまう。


「新幹線を使ったからね。取り敢えず今日はホテルについたらお風呂に入ってゆっくりしようか?」


「え~! ゆっくりしちゃうの? 結婚初夜なのに?」


確かに言われてみればこれはハネムーン。


色々あって沢山愛し合ってきたが……本来は今日が新婚初夜だ。


「そうだね、美沙姉、そんな事言うと眠らせてあげないよ」


「もう、和也くんったら、私の方が眠らせてあげないんだからね」


送迎用のバスで行っても良いんだけど、少し時間があいていた。


それならと近くで止まっていたタクシーに乗った。


「凄く大きいねこのホテル……」


「凄いよね。昔つくられた最高級ホテルみたいだよ……水族館みたいなお風呂に夜と朝食はバイキング。ゲームセンターからプールもあるし、此処だけでも充分楽しめると思う」


「凄い……」


「それじゃ行こうか?」


「うん」


笑顔で腕を絡めて来る美沙姉の横顔を見て……うん、新婚旅行だっていう実感が沸いてきたよ。


◆◆◆


受付で手続きを終えて部屋へ。


和室で6畳が二間でテラスがある。


オーシャンビューのなかなか良い部屋だ。


「凄く景色が綺麗」


「本当だね……」


村の近くにはこんな高い建物は無いから海よりも高いと言う方が凄く感じる。


こんな山の上から海まで一直線に見える。


その景色が凄く綺麗に見える。


だけど、それよりも浴衣に着替えた美沙姉の方が、もっと綺麗だ。


「綺麗だ」


「本当に綺麗だよね」


「いや、景色じゃなく美沙姉が」


「もう、いつもと変わらないよ」


「そうだね、美沙姉はいつも綺麗だよ」


「和也くん」


凄く良い雰囲気だけど、これからはディナーブッフェが待っているから今は我慢だ。


「美沙姉、そろそろご飯食べに行こうか?」


「そうだね……うん!」


二人で手を繋ぎながら会場に向かう。


「和也くん! これ物凄いよ……」


「本当に凄いね、まるで結婚式の披露宴みたいだね」


凄く広い会場に海鮮から肉料理までふんだんに置いてある。


「今泉様ですね、こちらへどうぞ」


テーブルに案内されてカードが置かれた。


「食べ放題は時間無制限ですので、ごゆっくりとお楽しみください」


二人して大きなお皿を持ち食事を取りにいった。


「和也くん、凄いローストビーフだって」


「美味しそうだね、シェフが切ってくれるのか、美沙姉も食べるよね」


「うん」


「それじゃ、2枚下さい!」


手早くシェフが切ったローストビーフがそれぞれのお皿の上に置かれる。


凄く美味しそうだ。


「他は……美沙姉、あそこのカニがある」


「凄いね!和也くん……ズワイガニじゃ無くてタラバだよ! タラバだよ!和也くん」


「本当だ」


結局、俺達は他の物も取らず、カニとローストビーフだけを取りそのままテーブルへ……


「「……」」


しまったカニを食べると無言になる。


カニは美味しいけど、選ぶんじゃ無かった。


「和也くん、カニは美味しいけど……」


「うん、無言になっちゃうから、他の物を食べようか?」


「そうだね」


その後は天ぷらやお寿司を持ってきてお腹いっぱい食べた。


◆◆◆


「お風呂に行こうか?」


「うん、それじゃ暫くお別れだね」


奮発したから部屋にも露天風呂があるんだけど、此処の名物の水族館風呂に入りたくて大浴場に向かった。


残念ながら、大浴場は混浴でなく男女別になっていて場所も少し離れている。


確かに大きな水槽があり凄いけど……何故か肝心の魚は少なく海亀が泳いでいる。


まぁ、緑は多く南国風なのは良いけど……これなら美沙姉と一緒に部屋の露天風呂の方が良かったかもな。


そろそろかな。


「美沙姉、待った~」


「ううん、今出たとこだよ」


結構早めに出たんだけど、美沙姉は既に出て待っていた。


風呂上がりの美沙姉はいつも以上に色っぽく見える。


「凄く綺麗だ」


「和也くん、いつもと変わらないって」


「ううん、浴衣が似合っていて、凄く綺麗で可愛い」


「全く和也くんは口が美味いんだから」


「本心しか言ってないよ」


「そう言うなら和也くんだってカッコ良いよ」


「そう」


ヤバい。


顔が赤くなってきた。


◆◆◆


部屋に帰ってくるともう布団が敷かれていた。


「お布団が敷いてあるね」


「そうだね……」


俺の部屋もベッドだし、今暮らしている家でもベッドで寝ている。


畳の部屋に布団が敷いてあるのは凄く新鮮だ。


それになんとなく二つの布団がくっつけて敷いてあるのがエロく感じる。


「和也くん……実は私ね、下着つけてないの」


美沙姉の浴衣のはだけた胸元を横から見ると立派な胸が良く見える。


「美沙姉エッチなんだ」


「和也くんはエッチなお姉ちゃんは嫌い? 私がエッチになっちゃったのは和也くんのせいなんだからね」


「ううん、美沙姉大好き」


「嬉しい」


そう言って、美沙姉は帯を解いた。


浴衣がはだけて、美沙姉の綺麗な裸が目に飛び込んでくる。


「美沙姉……凄く綺麗だ」


「和也くん」


きっと今夜もきっと眠れない。





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