護衛

商人の馬車が城門の前で待機していた


「おぉ、来たか」


護衛隊の男性が話しかけてくる


「護衛隊のリーダー?」

「まぁ、そうなるな。冒険者ランクは?」

「4級」

「そうか」


男性は安堵の息を漏らす

5級でなければ戦えはする

商人はクロナにランクを聞かなかった、だからランクが分からず不安に感じていたのだろう


「まぁ、勝手が分からないし殆ど任せる事になるけど」

「だろうな。護衛隊じゃない冒険者は護衛の依頼を殆ど受けないからな」


長期間拘束される護衛の仕事は冒険者の大半が苦手とする


「そう聞くね」

「貴女は?」


ミラは小声で聞いてくる


「護衛の依頼はしたこと無いな」


クロナはランクが上がったばかりで実績がない

他人の命が関わる依頼の為、そもそも受けれない


護衛隊の男性の案内で馬車に乗る

護衛隊のリーダー以外の護衛隊のメンバーは荷物が多く乗ってる方の馬車に乗っている


……荷物の方に多くの人員を割くのか。こっちは1人で、強さは程々


「怪しい」

「だね」

「やる?」

「尻尾出したら」

「分かった」


ミラは戦闘の準備をする


「片方は冒険者じゃないって聞いたけど戦闘は?」

「私は自衛程度で強くないです」


……完全に油断させる気だ


嘘をつく

ミラの服装はともかく見た目はか弱い少女

武器も持っていない


「そうか、関係を聞いても?」

「姉妹です。良く似てないって言われますが」


ミラが嘘の設定を作って言う


……凄いな


クロナは感心する

設定を作る話はしていない

その上で怪しくない、嘘に見えないような話し方をしている


「姉妹か。なんで隣国に?」

「昔引っ越した親戚がいるんです。ただ危険で行けなくて」

「あぁ、成程確かに危険だからね」

「はい」

「私が冒険者で少しは戦えるから会いに行く事になって……護衛隊も居ると聞いて」


話を合わせる

それから軽く雑談をしていると足音がする


……魔物だね。数も多い


「魔物が来た!」

「分かった。総員戦闘準備」

「私も」


馬車から飛び出そうとするクロナの服をミラは引っ張る


「手加減」

「分かった」


クロナの力がバレるとミラの嘘の意味が無くなる

怪しんでいる事を悟られてはならない


護衛隊は合計5人

魔法使い3人前衛2人と言うバランスのいい編成

武器を構えて魔物を迎え撃つ


「陣形!」

「10体か多いな」

「だけど弱い、すぐ倒すよ」

「援護する」

「無理はするなよ」


剣を抜くが前には立たず少し後ろに立つ

戦闘になる

魔物は弱い部類の魔物

護衛隊は余裕で倒していく

1体の魔物を相手取って苦戦する振りをする

上手く攻撃を捌いて遅い攻撃を出して防がれる


「やぁぁ! うわっ」


攻撃を上手く交わして転ぶ

すぐに立ち上がって切りかかる

そしてなんとか倒したという振りをする

丁度その時護衛隊も倒し終える


「おぉ、1人で倒せたのか」

「何とか」

「すぐ移動するよ。早めにあの場所に着かないと」

「そうだな」

「あの場所?」

「休憩場所、暗くなる前に着きたいから」

「確かに」


馬車に戻る


「おかえり」


妹の振りをするミラが言う


……可愛い


馬車が出発する


「そういえばなんで護衛をしてるんだ? 言っちゃ悪いがお前さん強くないだろ」

「そ、それは……護衛すれば無料になるって聞いたから……」

「お金はそんなに無くて……」

「成程、確かにそれなら俺も護衛受けるな。まぁ安心しろお前達はちゃんと送り届ける」

「それなら安心ですね。お姉ちゃん」

「そうだね」


魔物に遭遇する事無く順調に進む

特に怪しい動きはしていない


……気になるのはあの場所、休憩場所にしては変な気がする


ミラがピッタリ身体を寄せる


「アルトラ楽しみだね、何か情報」


普通の会話に小声を混ぜて話す


……それは器用すぎない? 私それ出来ないけど


「どうしたの? お姉ちゃん、適当に反応して話に混ぜればいいから」

「まぁ時間はかかるけどね。一先ずあの場所に向かう」

「場所? 遠出初めてだから楽しみ」

「はしゃがないでよ? 休憩場所だよ」

「私そんな子供じゃない、数日? 成程、そこでか」

「心配だよ。多分」

「自衛だって出来るから」


情報共有をする

馬車が進み魔物が現れる

また降りて迎撃する

そして倒し終える


「そろそろ」

「もうすぐだな」

「アイツらも待ってる」

「遅くなる訳には行かない」


……アイツらか。人がいるって事だよね。これは早くミラに情報共有しないと


間違いなく良い情報

あの場所と言われている場所には人が居るという情報

一足先に馬車に戻る


「おかえり大丈夫?」

「うん大丈夫、あの場所人待機してる」

「それは良かった。もうすぐ?」

「その筈」

「休憩場所はもうすぐだぞ」


リーダーが戻ってくる

そして馬車が動く

目の前で剣を拭いている

そして護衛隊の行っていた場所に着く

リーダーは後ろの馬車に居る仲間に目配せをする


「囲まれてる」


後ろの馬車に乗っていた1人が叫ぶ

馬車が止まる


「2人は中で待機、魔物じゃない」

「魔物じゃないって」

「盗賊?」

「あぁ、まぁ任せろ」


……間違いなく仲間か


リーダーと後ろの馬車に居た仲間が降りて盗賊の元へ向かう


「防御魔法使える?」

「軽いのなら」

「危ないから御者さんも中に入って」

「そ、そうだな」


御者を馬車の中に入れる

馬車の中からでは外は見れない

意識を深く沈める

魔力を感じる感覚を鋭くする

ミラが防御魔法を発動させる


「守護者よ我らを守り給えアイルシールド」


盗賊が馬車に入ってくる


「ひっ」

「盗賊が」

「護衛隊は?」

「悪ぃな」


盗賊はそう言って剣を抜く

クロナも剣を引き抜いて2人の前に立つ


「無謀だな。大人しくしてりゃ殺さないでやる」

「ふざけないで」

「諦めろもうお前達しか居ない」

「護衛隊が全滅?」

「さぁそれはどうだろうな」


……盗賊は1人、他は? 居ない。なんで?


「大人しくしろ」

「1人なら良いか」


盗賊を素早く切り裂く

血が飛び散る

何をされたか分からないまま盗賊は絶命する


「うおっ、はっ、えっ?」

「静かに」


ミラがすぐに御者の口を封じる

大声を出されたらバレる


「盗賊が来るまで戦闘音はしなかった。完全に黒だね」

「相手は何人?」

「魔力の感じからしてあと10人、少し離れた所にいる」

「どうする? 殺る?」

「殺るけど……外でやろう」


盗賊の死体を馬車から投げ捨てる


「それじゃ5人ずつ」

「勝てるのか?」

「問題ない。私達強いから」

「念の為に魔法使えたら防御魔法しといて、すぐ終わらせるけど」


馬車から降りて地を蹴る

素早く突っ込んで仕掛ける


……狙うは魔法使いからかな


魔法を厄介を考えて魔法使いを狙う

ミラが赤黒いナイフを取り出して投擲する

素早く飛んでいくナイフは盗賊の体に突き刺さる

頭を貫かれて1人が死ぬ


「なっ!」

「どういう事だ。奴らは弱いんじゃ」

「戦闘態勢」

「遅い」


既に接近していたクロナが素早く首を切り裂く

魔法使いの1人を殺す


「固まってるの助かるよ」

「舐めんな!」

「死ねぇぇ!」

「相手は2人だけだ!」


素早く連続で切り裂いていく

ミラも接近して離れた距離に居る盗賊を赤黒い剣で切り裂く

そしてナイフを投げて突き刺して仕留める


「この程度、1人だけ残して」

「了解、なら他は殺す」

「くっそ、どうなって」

「強過ぎる! 無理だ」


剣を振るう

生かすつもりで腕を切り落とす

1人が逃げ出す


「1人逃げた」

「逃がさない」


逃げ出した者をミラが追いかける

速度は圧倒的にミラの方が早い

すぐに追いつく


「遅い」

「た、助け……」


背後から胴体に剣を突き立てる


「ぐぁ……がぁ」

「殺そうとして助けて? ふざけてるの?」


首に剣を突き立てて殺す

動かなくなった盗賊を見下ろす


「戻らないと」


ミラが戻った時には勝負は終わっていた

たった1人だけリーダーが残されている

しかし、片足と片腕を失い逃げる事も出来ない


クロナは剣を向ける

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る