スタンピード
「スタンピードが来る。到着は1時間後、数は200を超える」
「ろくに準備が終わってない。最悪だな」
「やるしかありません。挟撃部隊の配置はもう時期終わります」
「では城壁前で待機だ。攻撃範囲に入った瞬間魔法で一掃する」
「了解」
「挟撃部隊は横から削ります」
「魔法で数を減らす」
騎士団長が城門前に出る
副団長は持ち場に着く
騎士達の緊張が高まる
「あれが騎士団長か」
「強そう」
「騎士団長も出てくるのか」
「騎士団長が居りゃ勝てるだろ」
「副団長も全員出てきてる」
「それくらいの一大事なのか」
「スタンピードだからな。それも今回は規模が大きいって言うし」
騎士団長は周りを見渡してクロナを探す
周りの人がザワついている中1人だけ遠くを見ている
魔物が来る方向をジッと見ている
「何を見ている」
騎士団長が近付き話しかける
「砂煙を見てる」
淡々と視線を動かさずに答える
騎士団長もクロナの見ている方向を見る
魔物の大群が走り大きな砂煙が舞っている
砂煙の大きさが魔物の量を証明している
「200以上の大群が来る」
「200か、なら30体くらいがノルマかなぁ」
「私に並ぶつもりなら50は倒して貰わないと困るな」
「並ぶ?」
「最強はどちらかという話だ」
「成程、良いね」
魔物の姿が見え始める
2人は剣を抜く
到着まではまだ時間がある
「先に数を減らす」
「そのつもり、指揮はしなくていいの?」
騎士や冒険者は後ろで待機している
前に出ているのはクロナと騎士団長の2人だけ
迫り来るは200を超える魔物の大群
「副団長に任せている」
アルトが指揮を執っている
本当なら騎士団長が指揮を執る筈だが前に出ている
「騎士団長が珍しい」
いつでも冷静に状況を見て的確に指示を出す
その騎士団長が指揮を放り投げるのは滅多にない
「みんなに激励の言葉とか言わなくていいの?」
「不要だ。言葉よりも行動で示す」
「その方が分かりやすい」
「往くぞ」
2人は魔物の大群の方へ突っ込む
「何やってんだあの2人!?」
「騎士団長とあれはクロナ?」
「流石の騎士団長でも死ぬぞ」
「止めなくていいのかよ」
「問題ありません」
「はぁ?」
「騎士団長は最強です。そして彼女は騎士団長が認めました」
「そりゃどう言う」
「あれは無視でいいのか」
「それよりそろそろ来ます。総員戦闘準備を」
「どうなっても知らねぇぞ」
「責任は取らねぇぞ」
「誰も取れませんよ。責任なんて」
魔物の大群の先頭の魔物が攻撃を仕掛けてくる
魔物が攻撃するよりも早く剣を振るい切り裂く
そして連続で何度も剣を振るい魔物を斬っていく
「ウィンドランス」
先頭がランスのように尖った複数の風の塊が魔物に突き刺さる
魔法を避けて突っ込んできた魔物を一振りで両断する
「ウォーターインパクト」
大きな水の塊が現れて突っ込んでくる魔物に飛んでいく
魔物は攻撃をして水の塊を破壊する
水の塊は爆発し前方に水の礫を飛ばす
魔物を貫いていく
2人は大群に呑まれる
「言わんこっちゃねぇ」
「ありゃ無理だろ」
「無謀過ぎる」
「あれはな」
「加勢しなくていいのか?」
「問題ありません」
「まじかよ」
戦闘準備をして待っている冒険者は大群に呑まれた2人を見て言う
無謀すぎると
魔物の群れに突っ込む自体自殺行為
今回はスタンピード、その規模も200を超える大規模
その上魔物の楽園と言われる程魔物が集まっていたエルダス山の魔物
普通なら死ぬ
普通なら
突っ込んで行った2人は普通では無い
ワール国、この国最強の騎士と剣技だけで魔法を斬り3人の副団長を倒した剣士
異常な程強い2人なのだ
大群に呑まれ魔物が襲いかかってきても怯まず恐れず攻撃を仕掛ける
魔物の血肉が宙を舞う
荒々しく吹き荒れる風が巻き上げ燃え盛る炎が魔物を焼き払う
そして2つの刃が触れる者全てを切り裂いていく
高速で振るわれた視認出来ない速度の剣撃が襲いかかる
「思っていたより張り合いが無いね!」
素早く首を掻っ切る
「噂とは時間と共に誇張される物だ。これならば勝てるな」
首に剣を突き立てる、引き抜く
「当然」
2人が魔物を倒していく
倒し切れていない魔物が城壁へ向かっていく
大幅に数を減らしている
「放て!」
「ファイア!」
「炎よ矢が如くファイアアロー」
「風よ矢が如くウィンドアロー」
「カマイタチ!」
挟撃部隊が抜け出した魔物目掛けて魔法を放つ
魔法を避ける様子もない魔物に命中して削っていく
だが弱い魔法では倒せない
「倒せません」
「構わん! 撃ち続けろ! 魔力が無くなり次第ポーションを使え!」
「はい!」
「ファイア!」
魔法を放ち続ける、ダメージは蓄積させているが数は余り削れていない
そのまま魔物は速度も落とさずに城門側に近付く
「盾部隊構え!」
盾を持ったメンバーが盾を構えて前に出る
その後ろで武器を構えたメンバーが待機する
盾で防いで武器で攻撃をして倒す
「魔法部隊一斉に放て!」
前衛部隊の後ろから魔法が魔物目掛けて飛んでいく
ダメージが蓄積していた魔物には良いダメージのようで一部の魔物は倒れ一部はよろめく
それでも突っ込んでくる魔物を盾で抑え込む
そして横から武器で攻撃を仕掛ける
「今だ!」
「くたばれ!」
「押せ!」
「抑えろ!」
「倒せぇ!」
「おぉぉぉ!」
「行くぞぉぉぉ!」
声を上げる
数は減ったとは言え強い魔物
死ぬかもしれない
その恐怖を振り払うように声を上げて攻撃をする
魔物の攻撃で盾が破壊されて吹き飛ばされる
血を吐き倒れる
直ぐに魔法使いが駆け寄り治癒魔法をかける
腕を握り潰され放り投げられる
蹴りをくらい内蔵が潰れ大量の血を吐く
土が魔物を拘束する、土の塊が貫く
結界が魔物の攻撃を防ぐ
血肉が飛び散る、飛び散った物が魔物か人か分からない程に混じり合う
「や、やめ……」
「ダリァァァ!」
「負傷者は下がれ!」
「急げ!」
「武器が壊れた」
「拾え!」
「がぁ……ごぼっ」
「突破されるんじゃねぇぞぉ!」
「抑えろ!」
「ファイア!」
「ファイアアロー!」
「こっちだ化け物!」
「ぐっ……た、盾をください。戦線復帰します」
「まだ傷が……」
「動けるな」
「当然だ」
「あぁ、腕がぁぁぁ」
「引くんじゃねぇぞ!」
「突破された!」
「不味い!」
「させるかぁ!」
「負傷した。治療を」
「動ける奴は前に出ろ!」
「私も出る!」
「嫌だ……死にたくない……」
「防御魔法を展開! 前衛部隊を守ります!」
「前衛部隊にバフをかけろ! 前衛部隊が崩れたら終わりだ」
「魔法を放て! 削れ」
「数は減っています。このまま倒し切ります」
「挟撃部隊、放て!」
「暴風よ荒々しく我が敵を貫けウィンドランス」
「くっそ、魔力が尽きた」
「ポーションを使え!」
「治癒薬ぶっかけろ!」
「お、俺はまだ」
「一旦治療受けろ。俺達が耐える」
「耐えるんだ!」
魔物の数が減る
そして咆哮が聞こえる
空気を揺らし地を揺らす
魔物の動きが止まる
魔物達は静かに空を見上げる
その姿は足掻きを辞めた死を覚悟した者達の姿であった
「なんだ今の」
「分からねぇよ」
「お、おいあれを見ろ」
「あ?」
「嘘……」
「あれは……」
「最悪なケースですね」
その大きな身体は空を隠す
影は地を暗がりに落としその者は矮小な存在を見下ろす
大きな一対の翼を広げ紫色の鱗が太陽の光で輝いている
今回のスタンピードにおいて想定されていた中で最悪なケース
それが現れた
魔物でありながら他の魔物とは一線を画す
圧倒的な存在感は周囲の生きとし生ける者を小さく思わせる
溢れ出す威圧感は生きる事を諦めるには充分な程の死を感じさせる
動けない、逃げる事も叶わない
「あれは無理でしょ」
「ははは、もう終わりだ」
「なんだよこの怪物は」
「意味が分からない」
「これが……」
希望は完全に絶たれた
皆、絶望する
もう勝ち目が無いと脳が理解する
本能が叫ぶ
「あれが龍!」
ただ1人だけこの場で目を輝かせていた
人生で初めて龍を見た
その姿は想像よりも恐ろしくその恐ろしさに美しさを感じる
「出たか」
クロナの隣に立つ
騎士団に配布されている通信機を使う
「戦えるか」
『すみません……身体が、ユイラさんも恐らく』
「仕方の無い事だ」
アルトとユイラは身体が動かない
出てきたら参加する予定だった
だがそれは甘い考えであったと思い知らされた
……身体が動かない。まさかこれ程までとは
……一緒に戦うって言ったのに……行かなきゃならないのに……身体が動けない
「2人は来れないそうだ」
「仕方ないね。それじゃ龍狩りと行こう」
「あぁ、そのつもりだ」
剣を強く握る
2人は前に出る
動かない魔物を退かしてあの存在に1番近い場所へ行く
「でもどうやって落とす?」
「その必要は無いようだ」
翼を動かしゆっくりと降りてくる
4本の足が地面につく
大きな揺れが生じる
骸龍ボルロダスと2人は対峙する
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