防衛の準備

「そう言えば細工は終わったの?」

「はい、広範囲では無いので」

「何をしたの?」

「城壁に札を貼りました」


クロナが戦っている間に南側の城壁に札を数枚貼っていた


「札?」

「陣が書かれた特殊な札です」

「そんな物が」

「自作しました。魔力を込めてあって私が魔法を発動させると札からも魔法が展開されるという物です」

「へぇ、便利」

「まぁ余り数が作れない上使い捨てで設置型の道具なので扱いは難しいですが」


札に陣を書き込む際に複雑な工程を行う必要があり魔法使いでも使える者は限られている高等技術


「防御魔法?」

「はい、城壁を覆う結界です。防御一点集中の代物です。今回は人間の出入り自由の設定にしています」

「成程」


……となると彼女も入れるのか。まぁスタンピード中に貴族を殺しに来ないと……思いたい


スタンピード中に暗殺を実行されたら恐らく防げない


「魔物が出たぞ」

「ロルベアだ!」


ロルベアが3体平原から走ってきている

真っ直ぐ城壁へ向かってきている

冒険者や門番を見ても怯む事無く突っ込んでくる


「おっ、来た」


クロナは走って向かう


「ちょっ……」

「ユイラは防御魔法で他の人を支援して」


誰よりも先に前に出る


「おい、あんた先行するな」

「連携して倒すぞ」

「私が1体倒すから2体任せる」

「はぁ?」

「止まれって」


制止する声を無視して突っ込む

ロルベアは走ったまま手を大きく振りかぶる

剣を抜いて3回胴体を切る

深い切り傷から大量の血を流して倒れる


「マジで倒しやがった」

「無茶苦茶な」

「ヤバっ、強っ」

「あんな強いのか」

「ぼさっとしない、来るよ」

「ロルベア2体か」

「2体なら何とかなるだろ」


残り2体は止まらず城壁へ向かっている

武器を持った冒険者が立ちはだかる


「炎よ矢が如く ファイアアロー」

「ファイア!」


魔法使いが炎の矢を作り飛ばす

単純な炎を作り放つ

身体強化の魔法を使った前衛の冒険者が切りかかる


……あれは大丈夫かな


槍を持った門番も参戦し複数人で相手取る


「深くは踏み込むなよ」

「俺達が防いでる間にやれ」


盾を持った冒険者が前に出て攻撃を防ぐ

盾を前に出して攻撃を受け止め隙を作る


「今だ!」

「任せろ!」


剣や槍などを持った冒険者が隙を狙って攻撃を仕掛ける


「ファイア!」

「カマイタチ」


後衛の魔法使いは離れて魔法を叩き込む

連携して2体と戦闘をする


クロナは他の魔物が来ないか待機する

他の冒険者が戦っている間に数を削る


「やっぱり来た」


他の魔物も走ってきている

突っ込み素早く切りかかる

攻撃しようと振り上げられた腕を切り裂き足を切り落とし動きを止める

倒れた魔物の背中に乗り首を掻っ切る

ウルフ種の魔物が突っ込んでくる

素早くクロナに接近してくる

城壁に向かうのではなくクロナに襲いかかる


……良いね。その方が楽だよ


城壁に向かわれたら倒し切れないが自分に向かってくるなら全員倒せる

迎え撃つ、素早く1体目の首を落として鼻先を柄で叩いて切り上げて両断する

背後から飛びかかった魔物に振り向かず背後へ突きを繰り出して突き刺す

引き抜いて横に居る魔物に剣を振るう

魔物は反応出来ず切られ倒れる

矢が飛んでくる

剣を振るい矢を両断する


「矢?」


矢が飛んできた方向を見る

小型の魔物が弓を構えている

数は1体


……異型種かぁ。矢は面倒だな


飛んでくる矢を全て切り落として接近し首を切り落とす

周りを見るがもう魔物は居ない

城壁側、ロルベアを見るともう倒されている


「戻るかな」


城門へ戻る


「とんでもないなあんた」

「あの数を1人で倒したのか。どんな魔法だよ」

「私は魔法使えないから」


冒険者に囲まれるが軽くあしらう

彼らも冒険者ならクロナの噂は聞いた事があるだろう

本人だと気付いていないのかそれとも手のひらを返したのか

どちらにしろクロナはマトモに対応する気にはならない


「お疲れ様です。助かりました」

「まぁ依頼だから……本体ってどのくらいの数になるの?」

「正確な数は分かっていません。規模によりますが過去に数十の大群から数百の大群まで目撃されています」

「数百はエグいなぁ」

「それも本体はロルベアよりも強い魔物が大量に来る可能性があります」

「ロルベアって山だとどのくらいの力なの?」

「真ん中くらいですね。ロルベア以外で今来てる魔物は弱い部類です」

「なるほど、それは厄介」


ロルベアよりも強い魔物が来れば弱い冒険者では対応が出来ない


……確か高ランク冒険者が出払ってるって言ってたし果たして止められるのか


クロナは強い

しかし、大群を倒し切る力は無い

せめて魔力を持っていればその可能性はあったが魔力すら持たない身では不可能に近い


……せめて数体ずつとかなら削れるけど、広範囲攻撃出来る人が欲しいなぁ。居るのかな


魔法には様々な攻撃魔法がある

その中に広範囲を纏めて攻撃する強力な魔法もある


「広範囲攻撃の魔法使える人っているの?」

「冒険者の中になら居ると思います」

「それなら何とかなるかな。ユイラの結界が削りきられる前に頑張って削るしかないか」

「防御魔法を使える冒険者及び魔法使いを待機させています」

「攻撃に出れる数は?」

「騎士と冒険者の前衛合わせても80、大半は騎士です。魔法使いはその倍は居るんですが回復役や防御役も居ますから攻撃参加の魔法使いもそれ程多くはないかと」

「前衛が崩れたら終わり、少なすぎる」

「今も集めてはいますが……期待は出来ません。それに強い魔物とやり合える人も限られていますからね」


数十体規模でも強い魔物が居れば複数人で相手をしないとならない

だから頭数が必要となる


魔法が使えるのにわざわざ前衛をやる人は少ない

その為どうしても魔法使いの方が多くなる

前衛の殆どは魔法が使えない人間か魔法が苦手な人間


そして今言った数は現状、参加を表明しているメンバーの数


スタンピードが始まる時にはその数も変動する

規模によっては戦意喪失して逃げ出す者も出てくる

規模が小さければ参加する人数は増えるが規模が大きければ大きいほどこちらの戦力は減り差が広がる


……騎士は逃げないだろうけど冒険者はそうじゃない。もっと準備は整えておかないと


「大量に治癒薬と魔力ポーションは?」

「無論、用意してあります。作戦は今騎士団長、副団長が今会議中で」

「そうなんだ」


……その作戦会議に割り込みたいな。冒険者嫌いの貴族だったら囮にされそうだし


貴族は平民を下に見る傾向にある

それは貴族が多い騎士と冒険者でも起きている

協力をしないと行けないが感情や常識は協力関係を築く上で邪魔になる恐れがある


「その会議って何処でやってるの?」

「騎士団の基地です」

「ユイラ〜騎士団基地何処?」

「ここから近い基地であればすぐそこですよ」

「え?」

「城門入ってすぐ、門番さん達の基地の真反対の建物が騎士団の基地の1つです」

「……まじか」


城壁外に出る時にいつも見ていた建物


……確かに騎士が出入りしてた気がする。丁度いいや


基地に向かう

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