一般通過JK、上を目指す決意を固める
配信を終えた舞夜は、深く息をついてソファに身を沈める。
達成感と安堵感が入り交じる中、ふと瑠璃のことが頭をよぎる。
収益化は舞夜にとって秘めた目標の一つだった。
達成まではそうとう困難に違いないと覚悟していたが、想像以上に早く叶えることができた。
しかし、収益化がゴールではなく、真に達成すべき目標の手段でしかない。
その真の目標というのは――。
そのとき、玄関の扉が開く音が聞こえた。
舞夜は沈んだ表情を瞬時に切り替え、明るい笑顔で瑠璃を出迎える。
「おかえり~!」
「わざわざ出迎えなくてもいいのに……。でも、ありがとう、ただいま」
疲れた様子の瑠璃だったが、舞夜の笑顔を見て表情が和らぐ。
「お風呂、湧いてるから先に入っちゃいなよ。その間にご飯温めておくからさ」
しばらくしてリビングに出てきた瑠璃の頬は、帰ってきたばかりのときより血色が戻っていた。
温め直したご飯を机に並べる。
毎晩、こうして顔を合わせて話す時間を大切にしているのは、舞夜なりの瑠璃への想いの表れだった。
といっても、瑠璃は基本聞き手に回って舞夜が喋るばかりだ。
舞夜が聞きたがっても、瑠璃にやんわりといなされてしまう。
そうなると強引に聞き出すこともできず、舞夜のターンばかりとなるのだった。
「あのね、今日ね。私のチャンネルが収益化されたんだっ」
「本当に? すごいね、舞夜は……。おめでとう、努力が報われたのね」
瑠璃は目を丸くして祝福の言葉を掛ける。
だが、同時にどこか疲れも感じさせる声色だった。
舞夜は机に乗り出し、瑠璃の手を取って微笑みかける。
「ねっ! これからは瑠璃ちゃんも一緒にやろうよ! 配信活動で生活できたら素敵じゃない?」
冗談めかした口調で舞夜は瑠璃を誘う。
「ふふ、私に配信なんて無理ね。それに、今の仕事も大切にしないと」
「いっそさ、ぱぱっとやめちゃいなよ。
探索者に戻って、私と一緒に探索者になったらきっと楽しいよ?」
「舞夜、わがまま言っちゃダメ。前にも言ったけれど、私のことは心配しないで」
瑠璃の口調は優しいが、真夜の言葉によって意思が変わることはないことが伺える。
舞夜は瑠璃のために今の仕事を辞めてほしいと願っても、結局のところ舞夜のエゴでしかない。
瑠璃の口から辞めたいと聞くまでは無理強いはできなかった。
それにまだ舞夜には、瑠璃を支えるだけの力がないのだ。
「……そっかぁ。でも、気が変わったらいつでも言って?」
「もちろん、そのときは相談させてもらおうかな」
普段の食卓とくらべてぎこちない雰囲気のまま時間が過ぎてゆく。
舞夜は瑠璃を心配そうに見つめながらも、心のなかで改めて誓うのだった。
もっと探索者としても配信者としても上にゆき、瑠璃を今の環境から解放してあげられるくらい強くなるのだ、と。
その思いを胸に、舞夜はダンジョン配信への熱を更に高める。
表向きは明るく振る舞いながら、内心では静かに闘志を燃やしていってるのだった。
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