世界(史)のベストを探す旅

川野遥

プロローグ?

 2024年のある日、神は三十年ぶりに人の様子を見る気になられた。


「ふわ~、前は"冷戦"とやらが終わっておったが、それからどうなったかのう」


 神は人の世をご覧になられ、そして驚愕された。


「何と、随分とまあ人が増えたものよ。そして、随分と混乱しておることよ」


 神はこのままではいけないと考えられた。


 しかし、神は「人事不介入じんじふかいにゅう」であるので、人の争いに自ら関与したいとは思われなかった。

 そこで神は天使長ミカエルを呼び、人の様子をお聞きになられた。


「これ、ミカエルよ。随分と人が増えておるではないか。これではまともに治まらぬ。これまであまたの人がいた中で、もっとも優れた者を探して、この世界を導かせるがよい」


 天使長ミカエルは大変に困った。


「あの、偉大なる神様、人はこれまで数多あまた多すぎて、誰が一番優れているか皆目見当がつきません」


 神はミカエルの無責任な発言に大層お怒りになられた。


「馬鹿者!」


 神はミカエルの右の頬を張られると、次いで「右を張ったら左も張らねばならぬ!」と言われ、左の頬も張られた。そのまま往時の曙もかくやというのど輪で土俵下まで突き落とされると、ミカエルが立ち上がるのを待たれた。


 そしてふらふらになって立ち上がったミカエルの肩を掴んで、ロックボトムをお見舞いになられると、そのまま腕を左右に振られ、ロープを往復されてピープルズエルボーをお与えになられた。

 神は、自らが人々の上にあることを改めて証明ピープルズ・チャンプなされた後、ミカエルにこう厳命された。


「何のために貴様ら天使どもに人の監督をさせていたと思っているのだ! 一年以内に最高の人をここに連れてこい! 分かったな!」

「は、ははーっ!」


 かくして、天使長ミカエルは、人がこの世に生まれてから今までの中で、最高の人を探さなければならなくなった。


 それはすなわち、世界史上の中から最高の人物を選ばなければならないことであった。

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