第20話 VIPになったにゃ
ロデスが試しに言ってみた『私は人間です』という言葉は嘘判定となった。
俺は驚いたが、ロデスは動じていない。分かってて言ったようだ。それはそうか。
本人の許可があったのでロデスを鑑定してみたところ、ロデスは人間ではなく【エルフ】であった。言われてみれば耳が尖っている。(異世界だからそういう人間も居るのかと気にしていなかった。昔見たSF映画の副官も耳尖ってたしな。)
結局、出会った時から一貫してロデスは嘘は言っていなかった事は分かったので、俺は信用してカードの使用者登録をする事にした。
肉球をカードにのせて魔力を流すと一瞬で登録が完了した。情報が流出して悪用されるのではないか懸念したのだが、ロデスを信用する事にしたのだ。
(仮に紛失しても、念ずるだけで自分の元に戻ってくるらしい。すごい技術だが、失われた古代の技術だそうで、今では作ることはもうできないとか。ある意味、本当のVIPにしか渡さないカードなのだそうだ。)
次からはそのカードを商業ギルドの門番に見せれば通してくれると言われた。それだけじゃない、身分証としても使えるそうで、街の門を通る時もこれを見せれば無料で出入りできると言われた。
金は現金で要求したため、用意するのに時間が掛かるというので後日また取りに来る事にした。
先程のVIPカードが証文になるが、念のためと言ってロデスは契約魔法を使った証文まで用意してくれたのだが…
俺は金が用意できた時に素材を渡すと言って【収納】に戻してしまった。
申し訳ないが、俺は人間をそこまで信用していない。
+ + + +
■ロデス
『マスターロデス、良かったのですか? 貴重なVIPカードを渡してしまって』
突然現れた賢者猫を見送った後、商業ギルドのサブマスターのリアンナがロデスに問いかけた。
「構わんさ。こんな時に使わなかったら何時使うと言うんだ?」
「それほどですか…。しかし、“賢者猫”ですか? 聞いたことないですが、猫人の賢者という事ですか?」
「ああ。俺も長く生きているが見たのは初めてだよ。伝説でしか聞いたことがない種族だ」
「長命なエルフが伝説としてか聞いた事がないって、相当ですね」
「厳密に言うと獣人とは違う、妖精に近い存在だと聞く。あらゆる魔法を使いこなす事ができる本物の【賢者】だ」
「でも…伝説の存在と言っても、それが本当だったら、と言う話ですよね? 伝説はたいてい、オーバーに話が盛られている事が多いのでは? あるいは、ステータスを偽装しているとか」
「実はな…彼には、俺の【鑑定】が通らなかった…」
「え?! マスターロデスの【鑑定】は、Sランクですよね? どんな偽装も見破れなかった事がないっていう…」
「ああ、それが通らなかった。つまりSランク以上のレベルを持っていると言う事になる」
「そんな存在と取引ができるようになるなんて、どれほど金を積んでも逃す手ははない得難い機会だぞ? 商業ギルドあげて最大限の優遇を徹底するよう、全職員に徹底しておけ」
「だが秘密厳守も徹底しておけ。商業ギルドだけで囲い込むのだ」
「…分かりました! 末端の職員では少々心もとないので、各部署のリーダーに秘密厳守とVIP待遇の厳守を徹底します」
+ + + +
■
商業ギルドを出た俺は、せっかく街に来たのだからと、街の料理屋に入ってみる事にした。
なにやら良い匂いがしている店があったのだ。(ちなみに俺は猫人なので、鼻はすごく利く。)
店に入ると、客の視線が一斉に俺に集まり、しばらくジロジロ見られたが、徐々に視線は外れていった。
「いらっしゃい、お客さん見ない顔だね」
「今日初めて街に来たにゃ」
「何にする?」
「おすすめの料理をくれにゃ」
「あいよ」
店の親父は厨房に引っ込んでいき、しばらくして料理を持ってきてくれたが、これが絶品であった。
それから、俺は街に来るたびにこの店で飯を食うようになったのだ。
・
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「ごちそうさん、ありがとにゃ~、うまかったにゃ~またくるにゃ~」
「まいど~」
店を出た俺は、街を出る事にしたのだが、門を通り抜けようとして、門番の衛兵達に止められた。
「おい、どこへ行く?」
「どこへと言われても……森へ?」
「森? こんな時間に森に行ってどうするんだ? まさか森に住んでいるというわけでもなかろう?」
「森に住んでいるにゃ」
「適当な事言ってもダメだぞ。許可証はあるのか? 街の獣人が許可なく街を出る事は禁じられている」
「…へぇ、この街はそうにゃのか? だが俺はこの街の者じゃにゃい。今日初めて街に来て、これから帰るところにゃ」
「街の住人ではないのか…?」
「なら……いいのか?」
「そう言えば外見も街の獣人とはちょっと違っているな……」
「あ、そうにゃ、これを見せろと言われていたにゃ」
俺は商業ギルドのマスターにもらったカスタマーカードを出して見せた。確かこれは身分証明書にもなるので、門の出入りも無料になると言っていた。
だが…
「なんだこりゃ…?」
衛兵はキョトン顔をした。
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