第18話 え? ケットシーって読むにゃ?

「これは…! マスターロデス、すみませんっすぐに追い払いますから!」


「やめやめ。ちゃんと相手の話も聞かないとダメだっていつも言ってるだろう?」


「ですが、相手は獣人ですよ?」


「相手が誰でも同じだよ。商売のチャンスはどこに転がっているか分からないんだ。それを逃すような門番なら辞めてもらうしかないよ?」


「そっ……すみません……」


「君、済まなかったね。僕はロデス。商業ギルドでちょっと偉い人をやっているよ。…君は?」


「…カイトにゃ」


「それで、どんな獲物を持ってるんだい?」


「色々にゃ。見てもらってほしいものを選ぶにゃ」


「どこに…?」


「【収納】に入ってるにゃ」


「収納? ああ、もしかして、マジックバッグを持っているのかい?」


「まぁそんな感じにゃ」


「ほんとに持ってるのか?」


「君、クビね」


「えっ?!」


「私が言ったことが理解できないみたいだから。君にはもっとふさわしい職場が他にあると思うよ?」


「そんな! 待ってください…! 私はただ……」


だが、ロデスは門番の弁解を無視し、俺の肩を抱え一緒に中に入ってしまう。すると入れ替わりに中から大男が外に出て、先程の門番だった男を黙らせていた。




  +  +  +  +




商業ギルドの裏の倉庫の空きスペースへ案内されたので、そこでいくつか魔物を出してやったが、それを見てロデスは目を白黒させていた。


ロデスは【鑑定】のスキルを持っているそうで、一つ一つ鑑定していた。しばらく待っていると鑑定を終えたようで、ロデスが戻ってきて、ひとつの魔物につき、金貨一万枚でどうかと提示してきた。(六種類ほど出したので合計金貨六万枚である。)


貨幣価値に慣れていないのでいまいちピンと来ないが、ここまで買い物をしてきた感覚からすると、かなりの大金だろう。


ただ、金額が金額なので、俺の事を少しだけ【鑑定】させてもらいたいとロデスが言ったので許可したが、魔力が自分に当たって擽ったいような感覚がして、反射的に弾いてしまった。


ロデスが鑑定が通らないと言う。なるほど、鑑定を受けるとあんな感覚がするのか、勉強になった。


もう一度鑑定するようロデスに言う。今度は弾かず我慢する。


だが、やはり見えないと言う。


鑑定は本来、自分よりレベルが高い相手には通らない。どうやら俺のレベルはロデスより高いようだ。


ただ、許可を出してくれれば、その項目については見られるようになるそうだ。ならばと、問題なさそうないくつかの項目について意識的に“許可”を出してやる。


するとやっとロデスも鑑定結果が見えるようになったようだ。


「…種族名:【賢者猫ケットシー】……!!」


「ケット……?」


「カイト君……いえ、カイト様と呼ばせて頂きますね。カイト様の種族名です」


「種族名はカイトシスじゃにゃいのか?」


「いえ、それはケットシーと読むのですよ」


「にゃんと、そうだったのか…」


“カイト・シス”なんて知らないと思っていたが、ケットシーなら聞いた事あるな…。たしか、不思議な国のアリスに出てきた猫の名前…だったか?(※違います)


「妖精猫、別名賢者猫とも呼ばれる、極めてレアないえ高貴な種族です。お目に書かれて光栄です…」


もう十分だと言う事で、全てを先に提示した通りの金額で買い取ってくれるという。今後も持ってきてくれたら全て買い取ると言ってくれた。


本当はまだまだ大量に魔物の素材が収納されているのだが、黙っていた。なぜなら、今出した分だけでも大金すぎてギルドの金庫にある現金では足りないので、全額用意するのに時間が掛かると言われてしまったのだ。


「カイト様、是非、商業ギルドに登録して下さい。そうすれば、足りない分は商業ギルドの口座に振り込みという形にいたしますので」


「嫌にゃ」


「え…? いや、何も不安になるような事はないですよ? 登録すると身分証ギルドカードが発行されます。そしてギルド内に口座が作られ、この人はこれだけ持っているとカードに記録されるのです。そしていつでも、世界のどこの商業ギルドの支店でも、現金を引き出す事ができますし、現金を使わなくても、カードを使って口座から直接決済が可能となるのです。便利ですよ?」


「それに、全世界で通用する身分証明書を手に入れる事でもあります。街の入城時などにも使えますよ」


「…断わるにゃ」


「なぜです? 商業ギルドの登録は、普通はかなり厳しい審査があるのですよ。でもカイト様はそれをなしで登録いたします、私の権限で。断る人はあまり居ないと思いますが…」


「メリットだけ言うのは詐欺っぽいにゃ。デメリットもあるはずにゃ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る