異世界幻想録〜黒髪の原罪〜

錆色兎

序章:灰色は鈍く光る

プロローグ 痛みと限界

僕はいじめられていた。


全身に迸る鈍い痛み。

見るに耐えない青痣。

傷だらけで醜く汚くなった顔面。


これが僕の日常だった。


罵られるのは当たり前。

殴られるのも当たり前。

「記念撮影」と称された公開処刑は、何度喰らったか忘れてしまった。


――人の「悪意」が怖い。


ずっと心の奥底で燻っていた感情は、今この瞬間、爆発した。

即ち、逃避だ。


僕の体重が預けられ、若干不安定な椅子が軋んだ音を立てる。

首に感じる化学繊維の感触には、少し痒みを覚えた。


さっさと終わらせよう。


そう思った直後、僕は椅子を蹴り飛ばした。



************



私は1人だった。


以前は色んな人と仲良くして、それなりに幸せな生活を遅れていたと自負している。

なのに、私はそれを手放した。


さもないと、誰も「私」を見てくれないと思ったからだ。


今でも夢に見る。

あの時、私に向けられた目は、全て「悪意」のあるものだった。


――人の「悪意」が怖い。


それを一身に受け続けた結果、耐えきれずに私は逃げ出した。


本当にあれで良かったのだろうか?

本当にあれが正解だったのだろうか?



今を以てわからなかった。



突然、家の外で轟音が響き渡った。


思わず外に出、音がした場所に行ってみると、そこには1人の少年が倒れていた。

短く黒い髪が、私を誘っているかのように揺れる。


何を思ったのだろう。


私は彼に手を伸ばしていた。

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