第29話 朝の恐怖
目が覚めると、照明を点けていないにもかかわらず、自分の部屋を一望できた。
どうやら朝に起きられたようだ。
あれから何日経ったのだろう。
長期的な時間の経過がわかるのは爪の伸長ぐらいだったが、少し前に不快感に耐えかねて切ってしまったため、もうわからなくなってしまった。
今日は午後から大学で懇談がある。
外に出る恐怖心で眠りが浅かっただけなのかもしれない。
朝に起きているのは大学の授業以来か。
朝は夜とは別種の恐怖がある。
夜の恐怖とは、明日がすぐ近くまで迫っている恐ろしさで、朝の恐怖とは、今日を迎えてしまった怖しさのことだ。
授業こそが恐怖の元だと思っていたが、そうではなかったようだ。
教室は、それでなくても人が多いのに、構成しているのは血気盛んな上に感情が放し飼いになっている若い学生ばかりだ。
その中にいるのは、ファラリスの雄牛の中で熱し殺されているのとそれほど変わらない。
処刑を待つ恐怖があまりにも大きかったため、それが全てだと錯覚していた。
やはり、生きることに恐怖を抱いているのだ。
それでも生活のリズムは戻さなければならないので、朝食にスティックパン一本を少しずつ口に入れた。
朝日の明るさと心の暗さとのちぐはぐさで脳が疲れたようなので、布団に戻った。
心臓の拍動に合わせて絶望が振動している。心臓が全身に絶望を送り出す臓器に変わったようだ。
数少ない逃げ道の一つとして、静かに目を閉じた。
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