第36話 校外学習②

「結構混んでるし先に席を取るか」

「アタシは中がいいわ。外暑いし」

「私もこの気温で外で座っているのはちょっと…」

「あたしはどこでもいいよ!」


カレー屋に着いたはいいが昼前なのに結構な人がいる。

まだ夏前とは言え今日はかなり暑い。レストラン内は冷房が効いていて結構涼しいのでカレーを食べるとなると中がいい。食べなくてもこの気温の中外で座って数十分過ごすだけでも結構疲れる。

なので俺たちはまず店内を捜索して空いてる席を探す。

幸いなこと奥の方に空いてる席があったのでそこを取った。


「じゃあ俺と五十嵐はカレー買ってくるから荷物頼むは」

「お願いねーー!」


俺と五十嵐は荷物を二人に預けてカレーを買いに行った。


***



鷹宮君、いつもお金のこと気にしたりあんな凄い所で沢山お肉を取ってくるのに必死なのにどうして今日はあんなに羽振りがいいんでしょうか。


「なんか納得いかないって顔ね」


三秋さんに考えていたことを指摘されてストローから口を離してしまいました。


「どうせ彼のことでしょ。何考えてたのよ?」

「・・・・・・なにかおかしくない?学校のお金とは言っても急にまるでお金に無関心みたいなあの感じ」

「それはまぁ、実際に自分のお金じゃないんだしそうでもなくない?」

「でも不安にならないのかしら?もしかしたら後で学園から返済を求められたりとかそんなこと思わないの・・・・・・」


誰だって自分のお金じゃなければ羽振が良くなる。

分かりやすく言えば借金のようなものだ。

それに鷹宮君が言った通り、世の中はそんなに甘くはない。うまい話には裏がある。

私の話を聞いて三秋さんは一口ジュースを飲んで答える。


「アンタの言うことは分かったわ。でもそれはアイツの個人の感性なんだから考えても仕方がないんじゃない?」

「それは・・・まぁ・・・・・・」


三秋さんの言う通り確かに考えても仕方ないことかもしれない。


「まぁ、アタシに分かることはアイツがアタシ達と思いっきり楽しもうとしてるってことかしら」


三秋さんは何気なくそう言ったが私にはそれがとても自信を持って言った言葉だと思った。


「私達と楽しもうと?でもかなり行き当たりばったりに行動してると思うけど」


普通そう思うならもっと念入りに計画を立てたりするものじゃないのかしら?


「それは慣れてないだけでしょう。アンタも言った通りアイツには基本お金がない。ならこういうところに来ること自体なかったんじゃないかしら?だからそんな自分でもアタシ達と楽しもうとアイツなりに頑張ってるんじゃないかしら」

「・・・・・・」


分からない。私にはあんまりそういう感じを彼から感じない。ちょっと羽振りがいいだけでそれ以外はいつもみたいで気持ちが悪い。


「荷物ありがとな」

「デザート買ってきたけど食べる?」


鷹宮君と五十嵐さんがトレーにカレーとデザートを乗せて戻ってきた。

タイミングが合えば彼にお金を使うのに躊躇いがないか聞いてみようかしら。



***


荷物を二人に預けて五十嵐と一緒に何を食べるか吟味する。


「俺はチキンカレーにするけどどうする?」

「あたしも鷹宮っちと同じでオッケー!」

「了解。それと何かデザートでもいるか?どうせ学園の金だし。気にせず食いたいもんは食ってこうぜ」


出来るならあれを食べとくんだったって思いはさせたくないしな。


「じゃあプリン2個!」

「オッケー」

「あんがと鷹宮っち!」

「別に俺の金じゃねえし」


実際懐が痛むのは学園だしマジでお礼言われる筋合いがなさすぎる。


「それとその鷹宮っちっていうどうにかならないのか?」

「あれ?もしかして嫌だった?」


俺が呼び名を指摘すると不安そうに確認する五十嵐。


「別に嫌ってわけじゃないが、なんつうか言いずらくね?」


そもそもどこか略して”っち”をつけるのは分かるが苗字にそのままつけて呼ぶならもう苗字のままでよくね?って個人的に思う。


「じゃあなんて呼ぶ?」

「そうだな。ハルとかハルキでいい」

「じゃあハルっちで!」


決定と言わんばかりに人差し指立てて俺に見せつける五十嵐。


「それでいい。別に苗字の方でも呼び方そっちに任せる。でも出来るなら名前の方が個人的にはいい」

「ならハルっちでけってーい!ハルっち早くカレー食べよ!あたしお腹ペコペコ!」

「へいへい」


五十嵐に腕引っ張られカレーとプリンを注文して三秋たちのところに戻る。


「荷物ありがとな」

「デザート買ってきたけど食べる?」

「ならもらおうかしら。六倉さんは?」

「いいんですか?」

「ああ、一応人数分買ってきたし、食わなきゃ五十嵐が食べる」

「では頂きます」


俺と五十嵐は自分の席に座り三秋と六倉にプリンを渡す。


「いただきます」

「いただきまーす!」


俺と五十嵐はカレーを、三秋と六倉はプリンを食べる。


「それでこれからどこを周るつもり?」


三秋の質問を聞いて、俺たち昼食を食べながら今後の行動の計画を立てることにした。


「とりあえずここから近い方のショーが割と時間がすぐだからそれを見るのは確定だろ。その後は三秋の要望通り服を買いに一旦入り口のエリアに移動する」

「一度反対側に戻るの?」

「ああ」


六倉の問いを俺は肯定する。


「一応こっちにも服を売ってるところはあるが品揃えや規模的にはエントランス近くの店の方が一番大きいみたいだからな。それにショーの会場の近くにそのエリアに向かう乗り物があるっぽいからそれに乗って移動するのがいいだろう。一旦これでいいか?」

「私は異論はないわ」

「アタシも」

「あふひも」


3人とも納得してくれたようだ。


「結構仲良くやれてるみたいだねはるき

「東…」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る